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ITベンダー・SIerがEMOROCO CRM Liteで受注率を20%から31%に上げた話 — 「感触がいい」を卒業した日
こんにちは、CRMエバンジェリストの松原です。
「あの案件、感触はいいと思うんですが……」
営業会議でこの言葉を聞くたびに、私は少し不安になります。
「感触がいい」という情報は、データではありません。
どれだけ優秀な営業担当者でも、人間の主観的な感触は外れることがある。
そして「感触がいい」案件が失注したとき、その理由を正確に分析できる情報が残っていないのです。
※本記事は業界の実態と複数社の導入パターンをもとにした仮想ストーリーです。
導入前——「なぜ負けたかわからない失注」が続いていた
私が経営するITベンダーは、社員15名・営業担当3名の中規模SIerです。
主に中堅製造業・流通業向けの業務システム開発・導入支援を手がけています。
受注率は長年20%前後で横ばいでした。
10件提案して2件受注。
この数字が「うちの相場だ」と半ば諦めていました。
問題は失注分析にありました。
失注した8件のうち、「なぜ負けたか」を正確に言語化できた案件は2〜3件だけ。
残りは「競合に価格で負けた気がする」「担当者の反応が途中から変わった」「最終的に社内稟議が通らなかったらしい」という曖昧な情報しか残っていませんでした。
当時の商談管理は、社内の共有スプレッドシートに「案件名・金額・確度・次のアクション」を入力するだけ。これではパターンが見えない。
「どういう案件が受注になりやすく、どういう案件が失注になりやすいか」という構造が、5年分の商談経験にもかかわらず、データとして残っていなかったのです。
出会い——「決裁者に会えていない案件は受注しない」という発見
EMOROCO CRM Liteを知ったのは、同業のITベンダー仲間の紹介でした。
「商談の構造をフィールドで管理できる」という一言が引っかかりました。
導入してまず最初にやったことは、過去2年分の案件(受注済み・失注済み合わせて68件)を遡って入力することです。半日かかりました。
この作業が終わった瞬間に、最初の発見が起きました。
受注した14件のうち、12件(86%)で最終提案前に決裁者と直接面談していた。
失注した54件のうち、41件(76%)で決裁者には一度も会えていなかった。
「決裁者に会えていない案件はほぼ受注しない」——これは薄々感じていた事実でしたが、数字で見たのは初めてでした。
担当者との関係を積み上げながら「感触がいい」と思っていた案件の多くが、実は「決裁者に届いていなかった」だけで失注していたのです。
設計——8つのリスク因子を「見える化」する
この発見を起点に、EMOROCO CRM Liteのフィールドを設計し直しました。
商談レコードの核心フィールド設計
決裁者・ステークホルダー管理:
| フィールド名 | 種類 | 内容 |
|---|---|---|
| 感情温度 | 選択式 | 赤=ホット / オレンジ=ウォーム / 青=クール / 水色=コールド |
| 決裁者接触状況 | 選択式 | 直接面談済 / 間接情報のみ / 未接触 / 不明 |
| 社内推進者の存在 | 選択式 | 明確にいる / いる可能性 / いない / 不明 |
| 競合状況 | 選択式 | 競合なし / 1社と競合 / 複数社と競合 / 競合深度不明 |
| 競合の深度 | 選択式 | 当社優位 / 互角 / 競合優位 / 競合に深く入り込まれている |
| 予算確保状況 | 選択式 | 確保済 / 申請中 / 未確保 / 不明 |
| 稟議の複雑さ | 選択式 | シンプル(1〜2名承認)/ 標準(3〜5名)/ 複雑(6名以上・委員会審査) |
8つのリスク因子フィールド(複数選択式):
□ 決裁者に一度も会えていない
□ 社内推進者が不在または不明
□ 競合が先行して深く入り込んでいる
□ 予算が未確保または不明
□ 前回接触から2週間以上アクションなし
□ 担当者が途中で変わった
□ 要件定義が曖昧なまま提案に進んでいる
□ 過去に同社への提案で失注経験がある
このリスク因子フィールドに3つ以上チェックが入った案件は、「構造的に受注確率が低い案件」として分類します。
【設計の核心】
リスク因子は「悲観的な情報を記録するため」ではありません。
「今何を解決すれば受注確率が上がるか」のアクションを決めるための診断ツールです。
「決裁者未接触」であれば今週アポを取る。
「競合が先行」であれば差別化の軸を変える。
リスクが見えることで、打ち手が決まります。
3ヶ月後——「感触がいい」から「構造で判断する」へ
EMOROCO CRM Liteを使い始めて3ヶ月後、営業会議の質が根本から変わりました。
以前の会議:
「A社の案件ですが、担当者の反応はいい感じです。来週提案書を持っていきます」
「B社は先方が前向きなんですが、なかなか次のステップに進めなくて……」
3ヶ月後の会議:
「A社の案件は感情温度ウォームですが、決裁者未接触・競合深度不明という2つのリスクが残っています。今週中に決裁者面談のアポを取ることを最優先にします」
「B社はリスク因子が4つついています。社内推進者が不在で予算未確保。提案を急いでも確率が低い。まず社内推進者の特定に集中します」
「感触」という言葉が会議から消え、「構造」と「次のアクション」の言葉に変わりました。
6ヶ月後——失注分析が「次の勝ちパターン」を教えた
6ヶ月分の商談データが蓄積されたとき、改めて失注案件を分析しました。
受注案件の共通点(直近6ヶ月・12件):
- 決裁者と面談済み:12件中11件(92%)
- 社内推進者が明確:12件中10件(83%)
- リスク因子2つ以下:12件中9件(75%)
失注案件の共通点(直近6ヶ月・21件):
- 決裁者未接触:21件中16件(76%)
- リスク因子3つ以上:21件中14件(67%)
- 提案時点で「競合に深く入り込まれている」:21件中11件(52%)
ここからわかった「勝ちパターン」は明確でした。
受注するための3条件:
- 初回接触から4週間以内に決裁者と直接面談する
- 社内推進者(私たちの社内スポンサーになってくれる人)を必ず特定する
- 競合が深く入り込む前に提案を行う(競合が先行している案件は戦略を変える)
この3条件をチームで共有し、「全商談でこの3つが揃うまでは提案書を書かない」というルールを設けました。
「IS→FS引き継ぎ設計」——チームの暗黙知を組織の知識に
私たちのチームで最も効果が大きかったのは、IS(インサイドセールス)からFS(フィールドセールス)への引き継ぎ設計でした。
以前の引き継ぎ情報は「会社名・担当者名・商談日・概算予算」だけでした。
FSが初めて訪問するとき、「なぜこの会社がうちに興味を持ったのか」「担当者はどんな課題を抱えているのか」「社内の意思決定構造はどうなっているのか」——この情報がゼロでした。
EMOROCO CRM Liteの引き継ぎナラティブメモに、以下の項目を必ず記録するルールを設けました。
【IS→FS引き継ぎナラティブのテンプレート】
■ 顧客が最も痛がっていること(1〜2文)
■ 刺さった言語フレーム(前のめりになった瞬間の言葉)
■ 刺さらなかった説明・アプローチ
■ 意思決定構造(誰が決める・誰が推進する・誰が反対しそうか)
■ 競合について言及されたこと
■ 次回面談で最初に確認すべきこと
このナラティブがあることで、FSが初回訪問から「前回の続き」として対話できるようになりました。
「インサイドセールスの方からうかがっていますが、〇〇という点が最も課題だとおっしゃっていたとのことで……」という入り方が、顧客との信頼形成を大幅に加速させました。
1年後——受注率20%から31%への変化
導入から1年後の数字です。
| 指標 | 導入前 | 1年後 |
|---|---|---|
| 受注率 | 20% | 31%(+11ポイント) |
| 決裁者との初回面談率 | 42% | 87% |
| 平均商談期間 | 4.2ヶ月 | 2.8ヶ月(△1.4ヶ月) |
| 「理由不明の失注」 | 月3〜4件 | 月0〜1件 |
| 週次報告会議の時間 | 月8時間 | 月2時間(後に廃止) |
| 1人あたり資料作成時間 | 週4時間 | 週30分 |
受注率が20%から31%になったことより、私が最も価値を感じたのは「理由不明の失注がほぼゼロになった」ことです。
失注しても「なぜ負けたか」がデータから読み取れる。その分析が次の商談設計を変える。これが「学習する営業組織」の姿です。
この1年で学んだこと——3つの教訓
教訓①:リスク因子は「撤退判断」にも使える
リスク因子が4つ以上ついている案件は、「受注確率が低い案件に多くのリソースを投下している」状態です。
こういった案件を早期に見極め、「追わない」という意思決定ができるようになったことで、追うべき案件への集中度が上がりました。
教訓②:競合分析は「勝つため」より「知るため」
競合状況フィールドで最も価値があったのは「競合に勝つための情報」ではなく「競合に負けているパターンの発見」でした。
「特定の競合が先行している案件は受注率が15%以下」というデータが見えたとき、「その競合と戦う土俵に乗らない」という戦略転換ができました。
教訓③:感情温度はB2Bでも機能する
「感情温度は個人向けビジネスのもの」と思っていましたが、B2Bでも機能します。
担当者(窓口)の感情温度と、決裁者の感情温度(間接情報から推測)を分けて管理することで、「担当者はウォームだが決裁者への情報が届いていない」という構造がわかります。
まとめ——「感触がいい」を卒業した営業組織へ
ITベンダー・SIerの営業は、「優秀な担当者の経験と勘」に依存することが多い業態です。
でもそれは「組織の資産」になっていない。担当者が退職した瞬間に、5年分の商談ノウハウが消えます。
EMOROCO CRM Liteで商談の構造(決裁者・推進者・競合・リスク因子)を可視化することで、「感触がいい案件」から「構造的に受注できる案件」という言語に変わります。
この転換が、受注率の改善と学習する組織の形成を同時に実現します。
「うちの受注率は相場だから」と諦めていた頃の私に言いたいのは、「失注の理由を正確に記録していなかっただけだ」ということです。
【今日からできる最初の1ステップ】 まず過去3ヶ月の失注案件を振り返り、「決裁者に会えていたか」だけを確認してみてください。その数字が、あなたの受注率改善の出発点になります。
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