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顧客管理をExcelで続ける会社が知らないうちに失っている5つのもの

こんにちは、CRMエバンジェリストの松原です。

「うちは今のところExcelで問題なく回っている」
——そう感じている経営者は少なくありません。
実際、Excelは優れたツールであり、否定するつもりはまったくありません。
しかし、会社の規模や取引先が増えていく過程で、Excelでの顧客管理は気づかないうちに5つの大切なものを失わせていることがあります。

今回は、その5つを一つずつ整理します。

目次

1.Excelが悪いわけではない、という前提
2.失っているもの①:関係性の継続性
3.失っているもの②:対応のスピード
4.失っているもの③:データの正確性
5.失っているもの④:情報の安全性
6.失っているもの⑤:経営判断のための分析力
7.5つが重なると、何が起きるか
8.何から始めればいいか
9.よくある質問(FAQ)
10.まとめ

1. Excelが悪いわけではないという前提

最初に断っておきたいのは、Excelというツール自体に問題があるわけではないということです。
表計算ソフトとして非常に優れており、少人数・少数の取引先であれば、十分に機能します。

問題が生じるのは、会社の規模や取引先の数、担当者の人数が増えていく過程でExcelという「表」の限界を超えた使い方をしてしまうことです。
以前CRMに関するよくある誤解を解くでも触れた通り、CRMが本来扱うべき「定型データ」と「非定型データ」をExcelという単一の表構造だけで管理しようとすると、どこかで無理が生じます。

2. 失っているもの①:関係性の継続性

Excelで管理された顧客情報は、多くの場合、特定の担当者のパソコンや共有フォルダの奥深くに存在しています。
「このお客様との関係は、実質的にAさんの頭の中にある」という状態は、Excelでの運用にありがちな落とし穴です。

Aさんが異動・退職すると、その関係性の経緯——過去のやり取り、好み、これまでの提案内容——が、組織の記憶として残りません。
新しい担当者は、ゼロからの関係構築を迫られます。
表面上はExcelファイルが引き継がれていても、そこに書かれていない「行間の情報」こそが、実は最も価値のある部分だったりします。

3. 失っているもの②:対応のスピード

Excelでの顧客管理では、「次にいつ、この顧客に連絡すべきか」を担当者自身が覚えておくか、定期的にファイルを見返して確認する必要があります。

・フォローすべきタイミングを担当者の記憶に依存してしまう
・複数の担当者が同じExcelファイルを更新しようとして、上書きや競合が発生する
・「今、どの案件が動いていて、どれが停滞しているか」を一覧で即座に確認できない

これらは、対応漏れや機会損失に直結します。
以前CRMを導入しなかった場合の損失シミュレーションで紹介した通り、対応漏れは具体的な金額として積み上がっていく損失です。

4. 失っているもの③:データの正確性

Excelは、入力のルールを強制する仕組みが標準では備わっていません。
そのため、次のような表記のばらつきが時間の経過とともに必ず発生します。

・「株式会社〇〇」「(株)〇〇」「〇〇株式会社」といった表記ゆれ
・電話番号のハイフンの有無、全角・半角の混在
・同じ顧客が、微妙に異なる名前で複数行に登録されてしまう重複データ
・「最新版」がどのファイルか分からなくなる、バージョン管理の混乱

こうした表記のばらつきや重複は、後から一括で集計・分析しようとした際に、正確な数字を出すことを難しくします。
「データはあるのに、信頼して使えない」という状態は、Excel運用の末期的な症状としてよく見られます。

5. 失っているもの④:情報の安全性

これは特に見過ごされがちな点です。
Excelファイルでの顧客情報管理には、パスワード保護の甘さ、ファイルコピーの氾濫、退職時の回収漏れといった構造的なリスクがあります。

東京商工リサーチの調査によれば、2025年に上場企業とその子会社が公表した個人情報の漏えい・紛失事故のうち、10.5%は「紛失・誤廃棄」が原因でした。
ノートパソコンやUSBメモリの紛失という決して特殊とは言えない出来事が、今でも重大な情報漏えいの原因になっています。
詳しくはExcelで顧客情報を管理するリスクで解説しています。

6. 失っているもの⑤:経営判断のための分析力

Excelでの管理が進むと、経営者や管理職が「今、会社の顧客との関係が、全体としてどういう状態にあるか」をリアルタイムに把握することが難しくなります。

・報告のたびに、担当者が個別にExcelを集計し直す必要がある
・集計結果が出るまでに時間がかかり、その間に状況が変わってしまう
・「なんとなく良さそう」「なんとなく心配」という感覚的な報告に頼らざるを得ない

CRM4.0が掲げる「関係性資産化」という考え方は、こうした感覚的な判断を客観的なデータに基づいた判断に変えていくことを目指しています。
Excelだけでの運用では、この土台そのものが作れません。

7. 5つが重なると何が起きるか

これら5つの「失っているもの」は、単独でも問題ですが、実際には互いに絡み合って悪化していきます。

関係性の継続性が失われると対応のスピードが落ちます。
対応のスピードが落ちると、担当者は焦って手作業でのデータ入力を省略し、データの正確性が下がります。
データが不正確になると、経営判断のための分析力が失われます。
そして、これらすべてが積み重なった状態のまま、パソコンの紛失やファイルの誤送信が起きれば、情報の安全性という最後の一線も崩れます。

Excelでの運用は、最初のうちは何の問題もないように見えます。
しかし、これらの綻びは、会社が成長するほど、静かに確実に広がっていきます。

8. 何から始めればいいか

すべてを一度に解決する必要はありません。
まずは次のステップから始めることをおすすめします。

1.現在、顧客情報がどれだけのExcelファイルに、どのパソコンに分散しているかを棚卸しする
2.最も重要な顧客データ(取引先情報や進行中の案件)から、CRMのような一元管理基盤への移行を検討する
3.既存のExcelデータをそのまま活かせる移行手段(インポート機能など)があるかを確認する

詳しくはExcelからCRMへの移行完全ガイドもご覧ください。

9. よくある質問(FAQ)

Q. Excelを完全にやめる必要がありますか?
いいえ。
分析やちょっとした集計にExcelを使うこと自体は問題ありません。
問題は、顧客情報の「一次情報の管理」をExcelだけに頼ってしまうことです。

Q. 会社の規模が小さいうちは、Excelで十分ですか?
規模が小さく、取引先も少ないうちは、Excelでも十分に機能する場合があります。
ただし、「担当者が一人しかいない」「取引先が増え始めている」といったタイミングが、見直しを検討すべき目安になります。

Q. 移行には、どれくらいの労力がかかりますか?
既存のExcelデータをインポートできる仕組みがあれば、ゼロからの入力し直しは不要です。
主要な項目から段階的に移行することで、負担を抑えられます。

Q. 5つの「失っているもの」の中で、最も優先して対処すべきものはどれですか?
自社の状況によりますが、多くの場合、まず「関係性の継続性」(担当者交代時の引き継ぎ問題)から着手すると他の問題への意識も自然と高まります。

10. まとめ

Excelでの顧客管理は、関係性の継続性、対応のスピード、データの正確性、情報の安全性、経営判断のための分析力という5つのものを知らないうちに失わせていく可能性があります。
Excelが悪いわけではありません。
会社がExcelで管理できる規模を超えて成長したということです。
今、少しでも心当たりがあるなら、まずは現状の棚卸しから始めてみてください。

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この記事を書いた人
松原 晋啓

アーカス・ジャパン代表取締役/CRMコンサルタント
詳細プロフィールはこちら
アクセンチュア等でSE、アーキテクト、コンサルタント、インフラジスティックスでエバンジェリスト(Microsoft MVP for Dynamics CRM(現 Microsoft MVP for Business Solutions))、マイクロソフトでソリューションスペシャリスト(Dynamics CRM製品担当)を経て、現在はCRMを専門に扱うサービスチームを率いて大小様々の企業のCRM導入や事業立上げを支援、その傍らでCRMエバンジェリストとしてイベントや記事寄稿を通じて"真の"CRMの理念の普及に努めている。
アクセンチュアでCRMを学び、マイクロソフトでCRM2.0(プラットフォーム型CRM)を提唱して世界的に広めてWWで表彰を受けたCRMの正統後継者にして現役最長のCRM専門家(CRM診断士/CRMドクター)
その後もCRM3.0(パーソナライズドCRM)、CRM4.0(クリエイティブCRM)を提唱するCRMの第一人者としてインタビューを受けたり、The Wall Street Journal、Newsweek、TIME、WORLDCOM、毎日新聞(週刊エコノミスト)、文化放送等、国内外で多くの賞を受賞し、「経済界」にて4年連続で関西財界を代表する企業として選出されている。
著書:バーサタイリスト - 35歳までに「1万人に1人」の実力者になる方法

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