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EMOROCO CRM Lite

司法書士・土地家屋調査士向けにEMOROCO CRM Liteで相談者管理と案件期限管理を設計する方法

こんにちは、CRMエバンジェリストの松原です。

「登記申請の期限を担当者の手帳で管理していて、休みのときに漏れてしまった」

「相続登記の依頼者から『その後どうなっていますか』という問い合わせが来るまで、進捗を報告していなかった」

「担当の先生が変わったら、依頼者から『また最初から説明しないといけないのか』と言われた」

司法書士事務所・土地家屋調査士事務所でよく耳にする課題です。

司法書士・土地家屋調査士の業務には「法定期限」「役所の締め切り」「依頼者の人生の節目」という複数の時間軸が交差します。
不動産登記・相続登記・会社設立・境界確定——これらの案件は、期限を一つ逃すだけで依頼者に大きな不利益が生じることもあります。

この記事では、EMOROCO CRM Liteを使って司法書士・土地家屋調査士事務所の相談者管理と案件期限管理を仕組み化する方法を解説します。


司法書士・土地家屋調査士の業務構造を整理する

CRM設計の前に、両士業の業務の特徴を整理します。

【司法書士の主な業務】

登記業務:
 ・不動産登記(所有権移転・抵当権設定・抹消等)
 ・商業登記(会社設立・役員変更・本店移転等)
 ・相続登記(2024年4月より義務化)

裁判所提出書類作成:
 ・成年後見申立て
 ・自己破産・個人再生申立て

その他:
 ・遺言書作成・遺産整理業務
 ・債務整理

【土地家屋調査士の主な業務】

表示登記:
 ・土地分筆・合筆登記
 ・建物新築・増築・滅失登記
 ・地目変更登記

測量・境界確定:
 ・筆界確認・境界確定測量
 ・地積更正登記
 ・マンション区分建物登記

【共通の特徴】
・案件ごとに法定期限・役所期限がある
・依頼者は「人生の節目」(相続・売買・新築等)にいる
・自治体・法務局・裁判所等との複数の外部関係者が絡む
・相談→受任→案件進行→完了→アフターフォロー のサイクル

フィールド設計——両士業に特化した14フィールド

依頼者(相談者)レコード

フィールド名 種類 内容
感情温度 選択式 赤=ホット / オレンジ=ウォーム / 青=クール / 水色=コールド
依頼者ステータス 選択式 相談中 / 受任済み / 案件進行中 / 完了 / 継続顧問 / 休眠
紹介元 テキスト 誰から紹介されたか(紹介ネットワーク管理)
関連不動産 テキスト 対象物件の所在・地番・家屋番号
家族構成メモ テキスト 相続案件での相続人関係・親族情報
担当者 テキスト 担当司法書士・調査士名
ナラティブ テキスト 「急いでいる様子」「不安が強い」「相続で兄弟間に複雑な事情がある」等
次回対応期限 日付 この依頼者に次にアクションを起こすべき日
紹介可能性 選択式 高 / 中 / 低 / 未評価

案件レコード(依頼者に紐づく)

フィールド名 種類 内容
案件種別 選択式 相続登記 / 不動産売買 / 会社設立 / 境界確定 / 成年後見 / 債務整理 / その他
案件フェーズ 選択式(BPF) 受任 → 書類収集 → 申請準備 → 申請済み → 完了
法定期限・申請期限 日付 相続登記の3年以内期限・役所への申請締切等
法務局受付日 日付 申請後の進捗管理
完了予定日 日付 依頼者への納期目標
書類収集状況 テキスト 未収集の必要書類のリスト
関係機関 テキスト 対応が必要な法務局・役所・裁判所・金融機関等

Business Process Flow(BPF)——案件進行の見える化

EMOROCO CRM LiteのBPF機能で、案件の進行状況を「フェーズ」として管理します。

司法書士版BPF(相続登記)

【相続登記のフェーズ設計】

フェーズ1:受任
 完了条件:
  □ 委任状に署名・捺印済み
  □ 着手金の受領確認
  □ 必要書類リストを依頼者に渡した
  □ 法定期限(相続開始を知った日から3年)の確認

フェーズ2:書類収集
 完了条件:
  □ 被相続人の戸除籍謄本(出生〜死亡)
  □ 相続人全員の戸籍謄本・住民票
  □ 固定資産評価証明書
  □ 遺産分割協議書(必要な場合)
  □ 印鑑証明書(相続人全員)

フェーズ3:申請準備
 完了条件:
  □ 登記申請書の作成完了
  □ 依頼者への申請内容の確認・承認
  □ 登録免許税の計算・確認

フェーズ4:申請済み
 完了条件:
  □ 法務局への申請完了
  □ 受付番号の記録
  □ 依頼者への進捗報告

フェーズ5:完了
 完了条件:
  □ 登記識別情報の依頼者への引き渡し
  □ 登記完了証の交付
  □ 報酬の受領確認
  □ アフターフォローの設定

土地家屋調査士版BPF(境界確定測量)

【境界確定測量のフェーズ設計】

フェーズ1:受任・現地調査
 □ 委任状取得・着手金受領
 □ 公図・地積測量図の収集
 □ 現地調査・測量実施

フェーズ2:関係者への説明・立会い依頼
 □ 隣接地所有者への連絡
 □ 境界確認立会いの日程調整
 □ 市区町村立会い(官民境界の場合)

フェーズ3:境界確認・協議
 □ 境界立会い完了
 □ 境界確認書への署名・捺印
 □ 境界標の設置

フェーズ4:登記申請
 □ 地積測量図の作成
 □ 法務局への申請

フェーズ5:完了
 □ 登記完了証の交付
 □ 成果品(測量図等)の依頼者への引き渡し

ワークフロー設計——期限管理×関係育成の7本

ワークフロー①:相続登記の法定期限アラート(最重要)

トリガー:法定期限の6ヶ月前
 (相続登記の義務化:相続開始を知った日から3年以内)

アクション:担当者へタスク生成
「【相続登記期限アラート】
 {依頼者名}様の相続登記期限まで6ヶ月です。
 
 法定期限:{法定期限}
 現在のフェーズ:{案件フェーズ}
 書類収集状況:{書類収集状況}
 
 未受任の場合:今月中に受任可否を確認すること
 受任済みの場合:書類収集の進捗を確認すること
 
 期限超過は依頼者への不利益と事務所の信頼失墜につながります」

2024年4月から相続登記が義務化されました。
法定期限(相続開始を知った日から3年以内)の管理は、依頼者への説明責任と事務所のリスク管理の両面で最重要ワークフローです。


ワークフロー②:書類収集の滞留アラート

トリガー:案件フェーズ=「書類収集」から30日経過

アクション:担当者へタスク生成
「{依頼者名}様の書類収集フェーズが
 30日経過しています。
 
 未収集書類:{書類収集状況}
 
 依頼者への進捗確認の連絡を。
 『書類の取得でお困りのことはありませんか?』
 と声をかけてください。
 代行できる書類の取得を提案することも検討してください」

ワークフロー③:申請後の進捗報告(依頼者への安心感)

トリガー:案件フェーズ=「申請済み」から7日後

アクション:担当者へタスク生成
「{依頼者名}様の申請から1週間です。
 現在の進捗をご報告ください。
 
 法務局受付日:{法務局受付日}
 完了予定日:{完了予定日}
 
 一言報告でも構いません。
 『法務局での審査が順調に進んでいます。
  完了予定は{完了予定日}頃の見込みです』
 と連絡するだけで依頼者の不安が大幅に解消されます」

依頼者が最も不安を感じるのは「申請後、何も連絡がない期間」です。
7日に1回の進捗報告が「丁寧な事務所」という印象を作り、紹介につながります。


ワークフロー④:案件完了後のアフターフォロー設計

トリガー:案件フェーズ=「完了」から30日後

アクション:担当者へタスク生成
「{依頼者名}様の案件完了から1ヶ月です。
 アフターフォローの連絡を。
 
 案件種別:{案件種別}
 
 確認事項:
 ・登記識別情報や完了証の保管状況
 ・その後、困っていることはないか
 ・今後必要になりそうな手続きの先読み提案
 
 相続案件の場合:
  他の相続財産・名義変更の漏れがないか確認
 不動産売買の場合:
  住宅ローン・火災保険の手続きに困っていないか確認
 会社設立の場合:
  変更登記が必要になる事態(役員変更・本店移転等)の説明」

案件完了がゴールではありません。
「次の案件・紹介」につなげるためのアフターフォロー設計が、士業事務所の長期的な成長を支えます。


ワークフロー⑤:相続登記完了後の二次相続・関連手続きの先読み提案

トリガー:案件種別=「相続登記」× 案件フェーズ=「完了」から1年後

アクション:担当者へタスク生成
「{依頼者名}様の相続登記完了から1年です。
 
 以下の観点で先読み提案の検討を:
 ・固定資産税の納税義務者変更は完了しているか
 ・遺産分割が未了の財産が残っていないか
 ・相続した不動産の売却・活用を考えていないか
 ・ご自身の遺言書作成の必要性
 
 年に一度の『その後のご確認』の連絡が
 長期的な顧問関係を生みます」

ワークフロー⑥:境界確定後の定期接触(土地家屋調査士向け)

トリガー:案件種別=「境界確定」× 案件フェーズ=「完了」から2年後

アクション:担当者へタスク生成
「{依頼者名}様の境界確定から2年です。
 定期確認の連絡を。
 
 確認事項:
 ・境界標の状態に異常はないか
 ・隣接地との境界トラブルが発生していないか
 ・増築・リフォームで新たな登記が必要になっていないか
 
 『先日設置した境界標のご確認はいただけましたか』
 の一言が関係を継続させます」

ワークフロー⑦:紹介のタイミング設計

トリガー:感情温度=「ホット」× 案件フェーズ=「完了」から30〜60日

アクション:担当者へタスク生成
「{依頼者名}様との関係がホットです。
 紹介のお願いをするベストタイミングです。
 
 案件:{案件種別}
 
 『もしご親族やお知り合いで相続・登記等でお困りの方が
  いらっしゃいましたら、ご紹介いただけると幸いです』
 の一言を自然な流れで伝えてください」

特有の課題——「担当者異動」と「相続人の複数管理」

課題①:事務所内の担当者変更リスク

司法書士・土地家屋調査士事務所では、スタッフの入退職が依頼者との関係に大きな影響を与えます。

ナラティブに記録すべき引き継ぎ情報:

「鈴木様(相続案件):
 長男と次男の間で遺産分割について意見の相違がある。
 表面上は穏やかだが、感情的なしこりがある様子。
 法的な説明より『家族の気持ちを大切にしながら解決したい』
 という言葉が刺さった。
 急かすと反発するため、丁寧なペースで進めること。
 ご長男が意思決定者で、次男はご長男の判断に委ねる姿勢」

このような情報が引き継がれることで、新担当者が「また最初から」ではなく「関係の続き」から始められます。

課題②:相続案件での複数相続人管理

相続案件では、複数の相続人全員が「依頼者」になります。

【複数相続人の管理設計】

代表相談者(窓口)レコード
 └── 感情温度・ナラティブ・連絡先を記録

他の相続人レコード(関係者として紐づけ)
 ├── 相続人A(長男)
 ├── 相続人B(次女)
 └── 相続人C(三男)

全員の連絡先・意向をナラティブで記録:
 「代表:長男(鈴木太郎)—積極的に手続きを進めたい
  次女(鈴木花子)—東京在住・書類送付は郵送希望
  三男(鈴木一郎)—遺産分割に消極的な様子・丁寧な説明が必要」

ダッシュボード設計——所長・担当者が毎朝確認する画面

【所長用ダッシュボード】

ビュー①:期限が近い案件の一覧
 → 法定期限・完了予定日まで30日以内の案件を優先表示

ビュー②:書類収集フェーズで30日以上滞留している案件
 → 進捗が止まっている案件の早期発見

ビュー③:相談者の感情温度分布
 → クール以下の割合が事務所の関係管理の質を示す

ビュー④:今月完了した案件のアフターフォロー状況
 → 完了後フォローの実施率をモニタリング

【担当者用ダッシュボード】

ビュー①:今日・今週のタスク一覧
 → ワークフローから自動生成されたアクション

ビュー②:自分の担当案件のフェーズ一覧
 → どの案件がどの段階にあるかが一目でわかる

他の士業記事との差別化——司法書士・調査士ならではの設計

税理士・社労士・行政書士との違いを踏まえた、司法書士・土地家屋調査士特有の設計ポイントは3つです。

①「法定期限」のシビアさ——相続登記の義務化・登記申請の期限など、守れなければ依頼者に不利益が生じる法定期限があります。他の士業より「期限アラートの精度」が重要です。

②「案件の一回性」が高い——不動産売買・相続・会社設立など、依頼者にとって一生に数回の出来事を扱います。この「人生の節目」に携わった事務所への信頼は深い。アフターフォローと紹介設計が長期的な成長の鍵です。

③「隣接士業との連携」——司法書士は税理士・弁護士・不動産業者・銀行と、土地家屋調査士は建設会社・不動産業者・司法書士と連携します。紹介元・紹介先のネットワークをCRMで管理することが新規案件の安定供給につながります。


まとめ——「期限の管理」から「関係の設計」へ

司法書士・土地家屋調査士事務所のCRM活用は、「案件の期限を漏らさない」という最低限の管理から始まります。
でもそこで終わらず、「依頼者との関係を育てる」設計まで進むことが、紹介が増え・顧問関係が生まれ・事務所が成長する経路です。

まず案件レコードへの法定期限・完了予定日の登録から始めてください。
期限が「担当者の手帳」から「組織の設計」に移った瞬間から、事務所の信頼性が変わります。

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製品情報:https://www.emoroco.com/


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この記事を書いた人
松原 晋啓

アーカス・ジャパン代表取締役/CRMコンサルタント
詳細プロフィールはこちら
アクセンチュア等でSE、アーキテクト、コンサルタント、インフラジスティックスでエバンジェリスト(Microsoft MVP for Dynamics CRM(現 Microsoft MVP for Business Solutions))、マイクロソフトでソリューションスペシャリスト(Dynamics CRM製品担当)を経て、現在はCRMを専門に扱うサービスチームを率いて大小様々の企業のCRM導入や事業立上げを支援、その傍らでCRMエバンジェリストとしてイベントや記事寄稿を通じて"真の"CRMの理念の普及に努めている。
アクセンチュアでCRMを学び、マイクロソフトでCRM2.0(プラットフォーム型CRM)を提唱して世界的に広めてWWで表彰を受けたCRMの正統後継者にして現役最長のCRM専門家(CRM診断士/CRMドクター)
その後もCRM3.0(パーソナライズドCRM)、CRM4.0(クリエイティブCRM)を提唱するCRMの第一人者としてインタビューを受けたり、The Wall Street Journal、Newsweek、TIME、WORLDCOM、毎日新聞(週刊エコノミスト)、文化放送等、国内外で多くの賞を受賞し、「経済界」にて4年連続で関西財界を代表する企業として選出されている。
著書:バーサタイリスト - 35歳までに「1万人に1人」の実力者になる方法

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