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【連載:EMOROCO CRM Lite導入コンサルティングの進め方】第1回 — 「何のためにCRMを入れるのか」を決める初回ヒアリングと現状診断
こんにちは、CRMエバンジェリストの松原です。
「CRMを入れたい」——このひと言で始まる相談は、実は大きく2種類あります。
「顧客情報を一元化したい(整理の問題)」と「顧客との関係を深めたい(戦略の問題)」——この2つは似ているようで、CRMの設計を根本から変えます。
アーカス・ジャパンがEMOROCO CRM Liteの導入支援を始めるとき、最初にやることは「システムの説明」でも「デモ」でもありません。「なぜCRMが必要なのか」を徹底的にヒアリングすることです。
この連載では、アーカス・ジャパンが実際にどう導入を進めるかを6回にわたって解説します。第1回は「初回ヒアリングと現状診断」です。
連載の全体像
第1回:初回ヒアリングと現状診断
「何のためにCRMを入れるのか」を明確にする
第2回:導入設計(フィールド・エンティティ・ワークフロー)
「どんなCRMを作るか」を設計する
第3回:構築・データ移行・初期設定
「実際に動くCRMを作る」
第4回:導入研修・定着支援
「現場が使い続ける体制を作る」
第5回:SoI-PDCA・ダッシュボード活用
「CRMを洞察のシステムとして機能させる」
第6回:定期健診・改善・進化
「CRMを育て続ける仕組みを作る」
なぜ「ヒアリングが最も重要」なのか
CRM導入プロジェクトの成否は、驚くほど初回ヒアリングの質で決まります。
ヒアリングが浅いと「担当者が入力しなくなる」「ダッシュボードを誰も見ない」「フィールドが業務に合っていない」という定番の失敗が起きます。これらはすべて「何のために・誰のために・どう使うか」が最初に明確になっていないことから生まれます。
逆に、初回ヒアリングで「このCRMの目的・使う人・使い方・成功の定義」が明確になっていれば、その後の設計・構築・定着はほぼ順調に進みます。
初回ヒアリングの構造——「5つの問い」
アーカス・ジャパンの初回ヒアリングは、以下の5つの問いを軸に進みます。所要時間は60〜90分が目安です。
問い①「今、何に困っているのか」——現状の痛みを正確に把握する
【ヒアリング項目:現状の痛み】
情報管理の問題:
・顧客情報が今どこにあるか(Excelのシート名まで確認)
・同じ顧客情報を複数の場所に持っていないか
・担当者が変わったとき、情報がどうなるか
フォローの問題:
・フォロー漏れはどれくらい発生しているか(月何件くらい)
・「あ、あの顧客に連絡するのを忘れていた」が月何回あるか
・フォローのタイミングを誰がどうやって決めているか
会議・報告の問題:
・週次または月次の報告会議に何時間かかっているか
・報告のためにExcelを集計する作業がどれくらいあるか
・「上司が顧客の状況を把握するための手段」は何か
引き継ぎの問題:
・担当者が変わったとき、どのように情報を引き継いでいるか
・引き継ぎによって顧客との関係が薄くなった体験があるか
・「あの担当者が辞めてから○○社との取引が減った」事例はあるか
このヒアリングで最も重要なのは「最も大きな痛みはどれか」を経営者・現場双方から確認することです。経営者は「見える化・管理」を求め、現場は「フォロー漏れ防止・引き継ぎ」を求めることが多い——この差を最初に把握することが、設計の方向性を決めます。
問い②「CRMを使うのは誰か」——ユーザーの実態を把握する
【ヒアリング項目:ユーザーの実態】
ユーザーの規模と構成:
・CRMを使う人数は何名か(概数)
・職種の構成(営業/管理/マネージャー/経営者)
・ITリテラシーの分布(得意な人・苦手な人の割合)
業務の実態:
・外出(訪問営業)と内勤の比率はどれくらいか
・スマートフォンから入力することは現実的か
・1日の中でPCを開く時間はどれくらいあるか
意欲とリテラシー:
・「CRMを入れよう」という話を現場はどう受け取っているか
・過去にCRMやITツールを入れて失敗した経験はあるか
・ITツールの導入を主導できる「推進役」が社内にいるか
「ユーザーが外出メインの営業担当者で、PCを一日1〜2時間しか開かない」という会社と「内勤中心でPCに常時向かっている」会社では、フィールド設計・入力ルール・ダッシュボードの設計が大きく変わります。
問い③「顧客はどんな存在か」——CRM4.0的な顧客観を確認する
【ヒアリング項目:顧客との関係の実態】
顧客の数と種類:
・顧客(取引先)は何社くらいあるか
・顧客の種類(個人/法人/その両方)
・主力顧客の上位20%が売上の何%を占めるか
関係の深さ:
・「長年の付き合い」の顧客が何社くらいあるか
・顧客との関係において「感情的な繋がり」を重視しているか
・「この顧客は特別」と感じる基準は何か(売上額/付き合いの長さ/人間的なつながり)
紹介の実態:
・現在の新規顧客のうち、紹介経由は何%か
・紹介してくれる「コネクター顧客」が何社かいるか
・紹介に対して何か特別なフォローをしているか
失注・離脱の実態:
・最近失注した案件で「なぜ失注したか」分かっているか
・「気づいたら来なくなっていた顧客」が年に何社あるか
このヒアリングで「この会社のCRMはSoR(記録)レベルから始めるのか、SoI(洞察)レベルを最初から目指すのか」の方向性が決まります。
問い④「成功したらどんな状態か」——ゴールを明確にする
【ヒアリング項目:成功の定義】
6ヶ月後の理想の状態:
・「CRMが成功した」と感じる状態はどんな状態か
・今困っている○○が解決されていればOKか
・数字で表すとすれば何が変わっていてほしいか
1年後のKPI候補:
・フォロー漏れ件数(目標:月○件以下)
・担当変更後の顧客継続率(目標:○%以上)
・週次報告会議の時間(目標:現状の△%削減)
・紹介経由の新規顧客数(目標:現状より○件増)
・感情温度クール以下の比率(目標:全顧客の○%以下)
失敗の定義:
・「これになったら失敗だ」と感じる状態は何か
・過去に別のCRMを入れて失敗した経験がある場合、
何が原因だったと思うか
「成功の定義」を最初に合意しておくことで、導入後の評価がブレなくなります。そして「失敗の定義」を聞くことで、顧客が最も恐れていることが明確になり、その懸念を最初から設計に組み込めます。
問い⑤「今後の事業・組織はどうなっていくか」——将来像を把握する
【ヒアリング項目:事業・組織の将来像】
事業の変化:
・3年後に事業規模はどうなっているか(拡大/維持/縮小)
・新しい顧客層や市場への進出を考えているか
・デジタル化・DXへの投資意欲はどの程度か
組織の変化:
・担当者の増員・採用計画はあるか
・事業承継・代替わりの予定があるか
・グループ会社・代理店への展開を考えているか
IT環境:
・現在使っているシステム(会計・在庫・基幹)は何か
・将来的にEMOROCOと連携させたいシステムがあるか
・データを外部クラウドに置けないセキュリティ要件があるか
現状診断——「バイタルサインの測定」
ヒアリングの後、現在の顧客管理の実態を「4つのバイタルサイン」で診断します。
【現状診断の4バイタルサイン】
診断①「顧客情報の所在地」:
□ Excelのどのシートに何が入っているか把握できているか
□ 担当者ごとに別々の管理をしていないか
□ 最終更新が半年以上前のデータが混在していないか
→ 「情報の散在度」を評価(高散在/中散在/集中管理)
診断②「フォローの仕組み」:
□ 「今週誰にフォローすべきか」をどうやって決めているか
□ フォローのリマインダーが存在するか(あれば何を使っているか)
□ 「重要顧客の定期フォロー」が仕組みとして存在するか
→ 「フォローの仕組み化度」を評価(0〜10点)
診断③「引き継ぎの質」:
□ 過去1年で担当者変更はあったか
□ その引き継ぎでどれくらいの情報が失われたか
□ 新担当者が「前回の続き」から顧客と話せるようになるまで
どれくらいかかるか
→ 「引き継ぎコスト」を評価(高/中/低)
診断④「データ活用の状況」:
□ 顧客データが「何かの判断」に使われているか
□ 週次・月次の報告はどんな指標を見ているか
□ 「なぜこの顧客が離脱したか」を分析したことがあるか
→ 「データ活用度」を評価(SoR/SoE/SoI)
この4つの診断結果を「現状診断レポート」として整理し、クライアントと共有します。これが「CRMを入れることで何が変わるか」の具体的なイメージを共有するための重要な資料になります。
初回ヒアリングで「してはいけないこと」
【初回ヒアリングのNGリスト】
NG①:最初にEMOROCO CRM Liteの機能を説明する
→ ヒアリング前に機能を説明すると、クライアントが
「この機能を使わなければならない」という
思い込みで要件を考えてしまう。
まず「現状の痛み」を聞いてから機能を紹介する。
NG②:「御社の課題は○○ですね」と早合点する
→ 経営者と現場で課題の認識が違うことが多い。
「経営者が見える化したい」≠「現場が入力しやすい設計」
両方の声を別々に聞いてから統合する。
NG③:「とりあえずすべてのフィールドを入れましょう」
→ 最初から完璧なシステムを作ろうとすると
フィールドが多くなり、現場が入力しなくなる。
「最初の30日は5フィールドだけ」という
スモールスタートの合意を初回で取り付ける。
NG④:「○○社も同じ課題でした。その場合は……」
→ 他社事例を安易に持ち込むと、クライアントが
「自分たちの話を聞いてもらえていない」と感じる。
参考事例は「ヒアリングの後」に提示する。
初回ヒアリング後の「合意事項」
初回ヒアリングの最後に、以下を口頭で確認し、後日文書で共有します。
【初回ヒアリング後の合意事項】
1. 「最も解決したい課題」の優先順位(上位3つ)
2. 「CRMを使う人」の確定(人数・ロール・ITリテラシー)
3. 「成功の定義」(6ヶ月後にどんな状態になっていれば成功か)
4. 「スモールスタートの範囲」(最初の30日で使うフィールドの上限)
5. 「CRMドクター候補者」の決定(社内推進役を1名確定する)
6. 次のステップ(第2回:設計セッションの日程)
この合意事項が、第2回以降の設計・構築・定着の「設計図の骨格」になります。
まとめ——初回ヒアリングが導入の8割を決める
【初回ヒアリングのチェックリスト】
ヒアリング実施前:
□ 経営者と現場担当者の両方が参加しているか
□ ヒアリング項目(5つの問い)を準備したか
□ 録音または詳細なメモの体制があるか
ヒアリング中:
□ 「現状の痛み」を具体的な数字(月○件・△時間)で確認したか
□ 経営者と現場の認識の差を確認したか
□ 「成功の定義」と「失敗の定義」を両方確認したか
□ セキュリティ・システム連携の要件を確認したか
ヒアリング後:
□ 4つのバイタルサインで現状診断を実施したか
□ 合意事項(6項目)を文書化して共有したか
□ 第2回(設計セッション)の日程を確定したか
次回(第2回)では、ヒアリング結果をもとに「どんなCRMを設計するか」——フィールド・エンティティ・ワークフロー・ダッシュボードの設計セッションを解説します。
EMOROCO CRM Lite 製品ページ
次回:[【第2回】導入設計——「どんなCRMを作るか」をクライアントと共に設計する]
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