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知識創造研究室 by CRM(xRM)

【連載:EMOROCO CRM Lite導入コンサルティングの進め方】第3回 — 「実際に動くCRMを作る」構築・データ移行・初期設定

こんにちは、CRMエバンジェリストの松原です。

第2回で設計ドキュメントが完成しました。第3回では、その設計を実際のEMOROCO CRM Liteに実装する「構築フェーズ」を解説します。

構築フェーズの目標は一つです——**「Day 7終了時点で、CRMドクターが基本操作を完全に習得し、主要顧客20社のデータが入っていて、第1本目のワークフローが動いている状態」**を作ることです。


構築フェーズの全体スケジュール(Day 1〜7)

【構築フェーズのスケジュール】

Day 1(2〜3時間):環境構築と基本設定
  ・管理者アカウントの設定
  ・エンティティの作成
  ・フィールドの追加と設定
  ・セキュリティロールの基本設定

Day 2〜3(各1〜2時間):データ準備とCSVインポート
  ・既存データのクレンジング(Excelの整理)
  ・CSVテンプレートの作成
  ・テストインポート(10件)と確認
  ・本番インポート(全件)

Day 4(1〜2時間):ワークフローの設定
  ・第1本目のワークフローを設定・テスト
  ・動作確認(トリガーを手動で発生させてテスト)

Day 5(1時間):ダッシュボードの設定
  ・赤アラートビュー(第1ビュー)の設定
  ・CRMドクターのダッシュボード確認

Day 6〜7(各30分):最終確認と全ユーザー招待
  ・全ユーザーのアカウント招待
  ・基本操作の動作確認
  ・「研修セッション(第4回)」の準備

Day 1:環境構築と基本設定

エンティティの作成

設計ドキュメントに基づいて、エンティティを作成します。

【エンティティ作成時の確認事項】

・エンティティ名は現場が理解しやすい日本語にする
  × Account → ○ 顧客企業
  × Contact → ○ 担当者・連絡先
  × Opportunity → ○ 案件・商談

・エンティティの表示順序は「最もよく使うもの」を先頭に

・最初は2〜3エンティティ。後から追加できる。
  「将来使うかも」のエンティティは今は作らない。

フィールドの追加

各エンティティに設計ドキュメントのフィールドを追加します。

【フィールド設定時の注意点】

感情温度フィールドの設定:
  形式:選択式(択一)
  選択肢:ホット / ウォーム / クール / コールド
  デフォルト値:設定しない(空欄)
  必須/任意:任意(強制しない)
  → 「なんとなくウォームにしてしまう」を防ぐため
    デフォルトは設定しない

「次のアクション」と「次のアクション期日」の設定:
  両フィールドは必ずセットで作成する。
  「内容」だけあって「期日」がない設計は
  ダッシュボードの「今週やるべきことリスト」が
  正しく機能しない。

ナラティブメモフィールドの設定:
  形式:複数行テキスト(上限を設けない)
  ラベル:「担当者メモ」または「ナラティブ」
  → 「詳細情報」「備考」という名前より
    「記録することが価値を生む」という
    意識が育つ名前にする。

セキュリティロールの基本設定

【セキュリティロールの基本設計】

最初はシンプルに2〜3ロールで始める:

管理者ロール:
  全エンティティの全操作が可能
  → CRMドクター・システム管理者

マネージャーロール:
  全員のレコードを閲覧・編集可能
  → 営業マネージャー・経営者

一般ユーザーロール:
  自分の担当レコードのみ操作可能
  → 一般営業担当者

→ 組織が大きくなったら後からロールを細分化できる。
  最初から複雑なロール設計は混乱の原因。

Day 2〜3:データ準備とCSVインポート

データ移行は「既存のExcelを綺麗にする作業」と「EMOROCOに取り込む作業」の2段階です。

CSVデータのクレンジング

多くの企業で、既存の顧客データには「汚れ」があります。

【よくある「汚れ」と対処法】

①重複レコード:
  「田中産業」「田中産業(株)」「タナカ産業」が
  別行に存在する。
  → 目視確認またはExcelの重複除去機能で統合

②表記ゆれ:
  「東京都千代田区」「千代田区」「東京 千代田区」
  → 統一表記に修正(住所は入力不要なら削除も可)

③「担当者不明」レコード:
  担当者欄が空白のレコード。
  → 空白のまま取り込むか、デフォルト担当者を設定するか決める

④感情温度の事前設定:
  インポート時点で全件「ウォーム」を入れるのは避ける。
  → 感情温度は「インポート後に担当者が手動で設定」とする。
    全件ウォームのCRMは意味がない。

⑤「過去の顧客」の扱い:
  3年以上接触のない「休眠顧客」をインポートするか否か。
  → 最初は「直近1〜2年の主要顧客」のみインポート推奨。
    休眠顧客は「コールド」エンティティとして後から整理。

CSVテンプレートの作成とテストインポート

【インポートの手順】

Step 1:EMOROCOのCSVテンプレートをダウンロード
  エンティティの設定が完了したら、
  CSVテンプレート(フィールド名が列ヘッダーになったもの)
  をエクスポートして確認する。

Step 2:クレンジング済みデータをテンプレートに貼り付け
  列のマッピングを確認しながら貼り付ける。
  文字コードはUTF-8を推奨(文字化け防止)。

Step 3:テストインポート(10件)
  まず10件だけインポートして「正しく取り込まれているか」を確認。
  特に確認するポイント:
  ・選択式フィールドの値が正しくマッピングされているか
  ・日付フィールドが正しい形式で取り込まれているか
  ・文字化けが発生していないか

Step 4:本番インポート(全件)
  テストが問題なければ全件をインポート。
  インポート後に「件数が正しいか」を確認。

Day 4:ワークフローの設定とテスト

第1本目のワークフロー(感情温度クール→フォロータスク生成)を設定します。

【第1本目ワークフローの設定詳細】

トリガー:
  エンティティ:顧客企業(または適切なエンティティ)
  条件:「感情温度」フィールドが「クール」に更新されたとき

アクション:タスクを自動生成
  タイトル:「【要フォロー】○○様 感情温度が下がっています」
  担当者:そのレコードの担当者(自動設定)
  期日:トリガー発生日の翌営業日
  説明(タスク本文):
    「感情温度がクールになりました。
     今週中に純粋な関心から接触してください。
     売り込みなし。『お変わりないですか』から始める。
     接触後に感情温度を更新してください。」

【動作テストの方法】
  1. テスト用の顧客レコードを開く
  2. 感情温度を「クール」に手動で変更する
  3. 翌営業日のタスクが自動生成されているか確認
  4. タスクの担当者・期日・本文が正しいか確認
  5. 問題なければ本番稼働とする

Day 5:ダッシュボードの設定

第1ビュー(赤アラートリスト)を設定します。

【第1ビュー「今週フォローすべき顧客リスト」の設定】

ビュー名:「今週の赤アラート」

表示条件(以下のいずれかを満たす顧客):
  条件A:感情温度が「クール」または「コールド」
          AND 最終接触日から14日以上経過
  条件B:次のアクション期日が「今日以前」(期日超過)

表示列:
  ・顧客名(リンク付き)
  ・感情温度
  ・最終接触日
  ・次のアクション内容
  ・担当者名

並び順:最終接触日の古い順(最も緊急度が高い顧客が上)

【動作確認の方法】
  ・数件の顧客の感情温度を「クール」に変更し
    14日前の日付を最終接触日に設定してみる
  ・ビューに正しく表示されるか確認
  ・問題なければ担当者のダッシュボードに追加

Day 6〜7:全ユーザー招待と最終確認

【全ユーザー招待の手順】

Step 1:ユーザーリストの準備
  全ユーザーの氏名・メールアドレス・ロールを確認

Step 2:招待メールの送付
  EMOROCOの管理画面からユーザーを追加し
  招待メールを送付する

Step 3:ログイン確認と初期パスワード設定サポート
  全ユーザーがログインできることを確認する
  パスワード設定のサポートを行う

Step 4:基本操作の確認
  各ユーザーが「自分の担当顧客」を開けるか確認
  感情温度フィールドが正しく見えるか確認

【Day 7終了時の確認チェックリスト】
□ エンティティが正しく作成されているか
□ 全フィールドが設計ドキュメント通りに設定されているか
□ 感情温度フィールドの選択肢・定義が正しいか
□ 主要顧客20社以上のデータがインポートされているか
□ 第1本目のワークフローが正常に動作しているか
□ 赤アラートダッシュボードビューが正しく機能しているか
□ 全ユーザーがログインできているか
□ 第4回(研修・定着支援セッション)の日程が確定しているか

「構築は終わりではなく始まり」——技術的な完成と使われることの差

「EMOROCOの設定が完了した」ことは「CRM導入が完了した」ことではありません。

システムが技術的に正しく動いていても、「現場が使い始め、使い続ける」状態になるまでは「導入完了」ではない——これがアーカスジャパンの定義です。

構築フェーズが完了したとき、クライアントに必ず伝えるメッセージがあります。

「これで土台ができました。次の研修セッションで、現場が『使いたくなる体験』を設計します。その体験が定着の鍵です」
EMOROCO CRM Lite 製品ページ


次回(第4回)では、全スタッフへの研修と「使いたくなる体験設計」——導入定着の最も重要なフェーズを解説します。


前回:[【第2回】導入設計——「どんなCRMを作るか」をクライアントと共に設計する]

次回:[【第4回】導入研修・定着支援——「現場が使い続ける体制を作る」]

関連記事:[CRM定着の行動心理学——「入力させる」のではなく「入力したくなる」設計の科学]

 

この記事を書いた人
松原 晋啓

詳細プロフィールはこちら
アクセンチュア等でSE、アーキテクト、コンサルタント、インフラジスティックスでエバンジェリスト(Microsoft MVP for Dynamics CRM(現 Microsoft MVP for Business Solutions))、マイクロソフトでソリューションスペシャリスト(Dynamics CRM製品担当)を経て、現在はCRMを専門に扱うサービスチームを率いて大小様々の企業のCRM導入や事業立上げを支援、その傍らでCRMエバンジェリストとしてイベントや記事寄稿を通じて"真の"CRMの理念の普及に努めている。
アクセンチュアでCRMを学び、マイクロソフトでCRM2.0(プラットフォームドCRM)を世界的に提唱したCRMの正統後継者にして現役最長のCRM専門家(CRM診断士/CRMドクター)
その後もCRM3.0(パーソナライズドCRM)、CRM4.0(クリエイティブCRM)を提唱するCRMの第一人者としてインタビューを受けたり、国内外で多くの賞を受賞している。
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