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「御用聞き」を卒業する — 製造業・メーカーのルート営業がEMOROCO CRM Liteの地図連携で得意先管理と提案型営業を実現する方法

こんにちは、CRMエバンジェリストの松原です。

「今日も〇〇さんのところに顔を出してきます」

ルート営業の朝は、こんな会話から始まることが多いはずです。決まった得意先を決まった順番で回る。注文を受けて帰る。また来週来る——これが何年も繰り返されています。

製造業の既存顧客深耕においては、御用聞き型の営業スタイルから抜け出せず、取引拡大の機会を逃している現場が多いという指摘があります。しかし「御用聞きからの脱却」と言われても、どう変えればいいかわからない。そう感じているルート営業担当者・マネージャーは少なくないはずです。

この記事では、EMOROCO CRM Liteの地図連携機能を中心に、得意先管理と提案型営業への転換を具体的な手順でお伝えします。


ルート営業が抱える「4つの構造的問題」

問題① 得意先情報が「担当者の頭の中」にしかない

従来の製造業の営業は、担当者の勘や経験、度胸(KKD)に頼る部分が多く、顧客情報や商談履歴も個人の手帳や頭の中にしかなく、組織としての情報資産が蓄積されにくい状況でした。

「A社の購買担当・田中さんは価格より納期を重視する」「B社は毎年10月に予算が動く」「C社は競合のX社も訪問している」——これらの情報はベテラン営業の頭の中にあり、その人が異動・退職した瞬間に失われます。

製造業の営業活動は、ベテラン社員の経験や人脈に依存しやすく、特定の担当者に知識やノウハウが集中すると、異動や退職時に顧客対応が滞るリスクが生じる——これは製造業ルート営業の最も深刻な構造的問題です。

問題② 訪問が「目的」になっている

「今日は〇〇社と△△社と□□社を回る」——訪問すること自体が目標になっていると、一件一件の訪問の質は下がります。

「何のために今日この得意先を訪問するのか」「この得意先は今どんな課題を抱えているのか」「今日提案できることは何か」——これらを事前に考えてから訪問できているルート営業担当者は、実は少数です。

移動時間を考慮した効率的な訪問ルートの組み立てと、各訪問の目的設計が同時にできていないと、1日が「移動と挨拶」で終わります。

問題③ 「3年周期で発注がある」パターンを見逃している

ある金型メーカーはSFA/CRMを導入し、顧客ごとの過去の取引履歴を一元管理することで、「この顧客は3年周期でこの部品を発注しているから、そろそろ提案の時期だ」といった需要予測や、これまで見過ごされていたクロスセルの機会を発見できるようになった

こうした「購買サイクルの読み方」はベテラン営業の暗黙知の中にあります。しかし記録されていなければ、若手には伝わらず、担当者が変わると一から関係を作り直すことになります。

問題④ 「今日どこを回るか」と「何を提案するか」が分離している

多くのルート営業では、訪問計画(どこを回るか)と提案計画(何を持っていくか)が別々に管理されています。結果として、地図を見ながら訪問先を決め、その場で「今日は何かありますか?」と御用聞きをする構造が維持されます。

「今日どこを回るか」と「何のために・何を持っていくか」が一画面で完結する——これが提案型営業への転換の起点です。


EMOROCO CRM Liteの地図連携が変えること

EMOROCO CRM Liteには、地図連携機能が標準搭載されています。得意先の住所を登録すると、地図上にピンとして表示され、以下のことが一画面で実現できます。

  • 今日訪問する得意先を地図で確認しながら、各社の「過去の訪問メモ・提案中の案件・次に話すネタ」を事前チェック
  • 訪問後すぐにスマートフォンから結果を記録
  • 「最近訪問できていない得意先」をアラートで把握

「今日どこを回るか」(地図)と「何を持っていくか」(顧客情報)が統合されることで、訪問前の準備時間が短縮され、訪問の質が一気に上がります。


得意先管理の全体設計——カスタムフィールドから始める

ステップ① 得意先レコードのカスタムフィールド設計

EMOROCO CRM Liteのノーコードカスタムフィールドで、製造業のルート営業に必要な情報を設計します。

【得意先レコードの必須フィールド】

基本情報:
・会社名・住所(地図連携のベース)
・業種・業態
・従業員数・売上規模(目安)
・担当購買部門・担当者名・役職
・メイン連絡先(電話・メール)

取引情報:
・現在の取引品目(複数選択式)
・月次平均取引金額
・取引開始年月
・最終受注日
・競合他社の状況(出入りしている競合名)

提案管理情報:
・現在提案中の案件
・次回提案候補品目
・購買サイクルの傾向(月次/四半期/半期/年次/不規則)
・次回提案推奨時期
・予算確定時期(年間予算が固まる時期)

関係管理情報:
・担当者との関係温度(ホット・ウォーム・クール・コールド)
・得意先の最近の動向(設備投資計画・新製品開発・コスト削減方針など)
・訪問推奨頻度(週1/月2/月1/四半期1)
・前回訪問日(自動更新)
・次回訪問推奨日

ポイント: 「予算確定時期」と「購買サイクル」の2フィールドが、提案型営業への転換の核心です。これが蓄積されることで、「今月この得意先に何を持っていくべきか」がデータから見えてきます。


ステップ② 地図連携での訪問前準備——「目的を持った訪問」を習慣化する

訪問ルートの設計(前日夕方または当日朝の5分):

  1. EMOROCOの地図画面を開き、今日訪問する得意先エリアを表示
  2. 各得意先のピンをタップし、「前回訪問メモ」「提案中の案件」「次回提案候補」を確認
  3. 訪問順序を地図上で最適化(移動ロスを減らす)
  4. 各訪問の「今日の目的」をメモ欄に一言入力してから出発
【訪問前チェック(各得意先・所要2分)】
□ 前回何を話したか(前回訪問メモ)
□ 現在提案中の案件の状況は?
□ 今日持っていくべき提案ネタは?
□ 競合他社の動きは最近どうか?
□ 関係温度は上がっているか、下がっているか?

この2分の確認があるだけで、「今日は何かありますか?」から「先日のあの件、その後いかがでしょうか。それと今日は新しいご提案があって来ました」という訪問に変わります。


ステップ③ 訪問後の「即時記録」——スマートフォンで3分で完結させる

訪問後は**その日のうちに(できれば移動中・車に戻ってすぐ)**EMOROCOに記録を入力します。

【訪問後の記録テンプレート(3分で完結)】

今日話した内容:
  (例:「新ラインの導入を検討中。Q3の予算承認後に本格検討したい」)

得意先の現在の状況・関心:
  (例:「コスト削減方針が経営から下りてきた。価格よりトータルコストで提案すべき」)

次回提案のフック:
  (例:「Q3予算承認のタイミング(8月頃)に再訪問。省エネ提案を準備しておく」)

競合の動き:
  (例:「A社も先週訪問していたとのこと。提案内容は不明」)

関係温度の更新:
  (ホット / ウォーム / クール / コールド)

次回訪問推奨日の更新:
  (例:8月第2週)

この記録が3ヶ月蓄積されると、「この得意先は毎年7〜8月に予算が動く」「担当者が変わった後、関係温度がクールになっている」というパターンが見えてきます。これが「感覚」を「データ」に変える第一歩です。


ステップ④ ワークフロー自動化——「提案の種まきタイミング」を見逃さない

各得意先の「購買サイクル」と「予算確定時期」フィールドをもとに、提案タイミングのタスクを自動生成します。

【得意先別の自動タスク設計例】

予算確定時期フィールド「10月」の得意先
  → 8月1日:「Q4予算確定前の提案準備タスク」を自動生成
  → 9月1日:「来期提案の事前アポイント取得タスク」を自動生成

購買サイクル「四半期」の得意先
  → 前回受注日から75日後:「次回発注前の提案アプローチタスク」を自動生成

最終受注日から180日以上経過(休眠兆候)
  → 「休眠リスク確認タスク」を自動生成
  → 内容:「なぜ発注が止まっているか確認。競合に切り替わった可能性を調査」

関係温度が「クール」に変わった得意先
  → 「関係温度回復アクションタスク」を自動生成
  → 内容:「工場見学の提案・新製品サンプル持参・情報提供など、価値提供型の接触を実施」

このワークフローが動くことで、担当者が「そういえばあの得意先、最近発注が来ていないな」と気づく前に、システムが先に動き始めます。


ステップ⑤ ダッシュボードで「今週の優先訪問先」を5分で決める

EMOROCO CRM Liteのダッシュボードに以下のビューを設定します。

【ルート営業管理ダッシュボード】

今週のフォロータスク一覧(優先順位付き)
  → 提案タイミング・休眠確認・定期訪問のタスクを一覧表示

「最終訪問から30日以上経過」× 「関係温度ウォーム以上」
  → 訪問できていない重要得意先。今週優先的に回るべきリスト

「次回提案推奨時期が今月・来月」
  → 提案の種まきが必要な得意先。何を持っていくかを今週中に準備

「最終受注から120日以上経過」
  → 受注が止まっている得意先。競合切り替えの可能性を調査

「担当者変更から60日以内」
  → 引き継ぎリスク。新担当との関係構築が急務の得意先

マネージャーはこのダッシュボードを見るだけで、「今週チームが優先すべき得意先はどこか」を把握できます。週次ミーティングでダッシュボードを共有すれば、「なんとなく報告する会議」が「データに基づいて判断する会議」に変わります。


「御用聞き」から「提案型」へ——データが変える訪問の質

SFA/CRMに蓄積されたトップセールスの商談履歴や成功パターンを分析し、若手向けの研修資料やトークスクリプトを作成・共有した結果、チーム全体の受注率が平均で15%向上したという製造業の事例があります。

これは単なるツール導入の成果ではありません。「ベテランの暗黙知」がデータになり、組織の資産になったことの成果です。

EMOROCO CRM Liteで得意先情報を蓄積し始めると、やがてこんな気づきが生まれます。

「A社への提案は毎回3回目の訪問で決まっている。つまり最初の2回は関係構築の期間」

「B社は価格交渉をしてくる得意先だが、記録を見ると技術的な問題解決をした後は値引きなしで受注できている」

「C社担当者の田中さんが異動した後、関係温度がクールになっている。新担当の佐藤さんへのアプローチが必要」

こうした気づきは、ベテランが記憶の中で「なんとなく」感じていたことです。それがデータとして可視化されることで、若手も同じ質の提案ができるようになります。

過去の購買履歴といったデータを分析すれば、顧客が次に何を求めているのかを予測し、先回りした提案が可能になる。データに基づかない画一的な製品紹介では、もはや顧客の心をつかむことはできない

製造業のルート営業は今、この転換点に立っています。月1,500円のEMOROCO CRM Liteは、その転換を小さく・確実に始めるための最初の一歩です。
https://www.emoroco.com/


まとめ——ルート営業DX実践チェックリスト

カスタムフィールドの設計:

  • 得意先の住所が登録され、地図上にピン表示されているか
  • 「購買サイクル」「予算確定時期」「次回提案推奨時期」が設定されているか
  • 「競合他社の状況」「担当者との関係温度」が設定されているか
  • 「次回提案候補品目」「得意先の最近の動向」が更新されているか

地図連携の活用:

  • 訪問前に地図で得意先を確認し、前回メモ・提案内容をチェックしているか
  • 訪問後に「今日話した内容・次回のフック・関係温度」を即時記録しているか

ワークフローの設計:

  • 予算確定時期の2ヶ月前に「提案準備タスク」が自動生成されるか
  • 購買サイクルに合わせた「次回発注前提案タスク」が設定されているか
  • 「最終受注から120日経過」「関係温度クール変化」のアラートが設定されているか

ダッシュボードの設計:

  • 「今週優先訪問すべき得意先リスト」が一目でわかるか
  • マネージャーが全担当者の状況をリアルタイムで把握できるか

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この記事を書いた人
松原 晋啓

詳細プロフィールはこちら
アクセンチュア等でSE、アーキテクト、コンサルタント、インフラジスティックスでエバンジェリスト(Microsoft MVP for Dynamics CRM(現 Microsoft MVP for Business Solutions))、マイクロソフトでソリューションスペシャリスト(Dynamics CRM製品担当)を経て、現在はCRMを専門に扱うサービスチームを率いて大小様々の企業のCRM導入や事業立上げを支援、その傍らでCRMエバンジェリストとしてイベントや記事寄稿を通じて"真の"CRMの理念の普及に努めている。
アクセンチュアでCRMを学び、マイクロソフトでCRM2.0(プラットフォームドCRM)を世界的に提唱したCRMの正統後継者にして現役最長のCRM専門家(CRM診断士/CRMドクター)
その後もCRM3.0(パーソナライズドCRM)、CRM4.0(クリエイティブCRM)を提唱するCRMの第一人者としてインタビューを受けたり、国内外で多くの賞を受賞している。
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