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知識創造研究室 by CRM(xRM)

アパレル卸がEMOROCO CRM Liteでバイヤーとの関係を仕組み化し、展示会からの受注率が1.8倍になった話

こんにちは、CRMエバンジェリストの松原です。

「山田さん、今季のA社さんへの提案、どこまで進んでいますか?」

「えーと…展示会で反応よかったんですが、そのあとメールを送って…まだ返事が来ていないかな」

「それ、いつの話ですか?」

「展示会が3週間前だから…2週間くらい前ですかね」

2週間、フォローなし。

私が営業部長として毎週やっていたこの確認作業が、そもそも問題の本質でした。展示会で反応の良かったバイヤーへのフォローが、担当者の記憶と「なんとなく」で管理されていた。

私たちは大阪に本社を置く、独自ブランドとセレクト商品を扱うアパレル卸の会社です。取引先の小売店・セレクトショップ・百貨店は全国に約120社。年2回の展示会を軸に、シーズンごとの商談・発注を管理しています。

しかし実態は「展示会の熱量が消える前に動けていない」「バイヤーの状態が担当者の頭の中にしかない」「誰がどの取引先をどのフェーズで管理しているか、部長の私が即座に答えられない」という状態でした。

これが変わったのは、EMOROCO CRM Liteを導入してからです。


アパレル卸ならではの「3つの構造的問題」

問題を整理すると、卸営業特有の3つに集約されました。

【アパレル卸が抱えていた「3つの構造的問題」】

問題①「展示会の熱量が消えてから動いている」:
  年2回の展示会(春夏・秋冬)は受注の最大のチャンス。
  しかし展示会でバイヤーが「いいね」と言った熱量は、
  その場が最高温度で、時間とともに下がっていく。
  
  「感触の良かったバイヤーへのフォローアップ」が
  担当者の記憶と「そのうち連絡しよう」で管理されていた。
  展示会から2週間後にメールを送っても、
  バイヤーは他社の展示会も回っており、
  熱量はすでに別のブランドに移っている可能性がある。

問題②「バイヤーの「買う理由」が担当者の頭の中にしかない」:
  ベテランの営業・山本は
  「A社のバイヤー田中さんはコンテンポラリー寄りを好む・
   本社ではなく現場店長の意見が強い・
   毎年秋に新規ブランドを1本入れる習慣がある」
  という情報を頭の中で管理していた。
  
  しかし山本が担当する120社のうち、
  この深度で把握できているのは上位20社程度。
  残りの100社は「去年いくら受注したか」という
  数字しか残っていない。

問題③「シーズンの切り替わりで必ず「取りこぼし」が起きる」:
  前シーズンに「次は絶対入れたい」と言っていたバイヤーが、
  新シーズンの展示会の後に連絡が取れなくなる。
  「あのバイヤー、今シーズンはどうなった?」という
  確認が毎回の営業会議の半分を占めていた。

アパレル卸とBtoB営業CRMの共通点——「バイヤーは顧客であり、パートナーである」

EMOROCO CRM Liteを検討し始めたとき、最初は「一般的な営業CRMがアパレル卸に使えるのか」という疑問がありました。

しかし考えてみると、アパレル卸の営業はBtoB営業そのものでした。

【アパレル卸の営業 ≒ BtoB法人営業の構造】

アパレル卸の営業:      BtoB営業の構造:
バイヤー              ←→ 顧客担当者
バイヤーの上長          ←→ 意思決定者
展示会での反応          ←→ 商談での感情温度
シーズンごとの発注       ←→ 定期更新・継続契約
展示会後のフォロー       ←→ 提案後のクロージングフォロー
ブランドへの信頼         ←→ サービスへの信頼
取引先の規模・方向性      ←→ 顧客のICX(価値観・こだわり)

→ 「感情温度・ナラティブメモ・ICXキャプチャー」という
  CRM4.0の設計が、アパレル卸にそのまま適用できる

特に「感情温度」の概念は、展示会後のフォロー設計に完璧に当てはまりました。

展示会でバイヤーが「これいいですね」と言った瞬間が「ホット」。「検討します」が「ウォーム」。「またいつか」が「クール」。「ありがとうございました(笑顔で去る)」が「コールド」。

この温度感をその場で記録することが、展示会後のフォロー設計の基盤になります。


設計の核心——アパレル卸特有のフィールドとワークフロー

EMOROCOの設計は、私が1日半かけて行いました。一般的な法人営業CRMに、アパレル卸特有のフィールドを追加しました。

【アパレル卸向けEMOROCOフィールド設計】

取引先(小売店・セレクトショップ)レコード:
  基本情報:
  ・店舗名・法人名・所在地
  ・バイヤー名(メイン)・連絡先
  ・意思決定者(バイヤーの上長・オーナー)
  ・業態(セレクトショップ/百貨店/EC/直営等)

  取引状況:
  ・感情温度(ホット/ウォーム/クール/コールド)
  ・最終接触日
  ・今シーズンの商談フェーズ(選択式):
    未接触 / 展示会訪問済み / フォロー中 /
    提案完了 / 受注交渉中 / 受注済み / 見送り
  ・今シーズン受注金額(数値)
  ・前シーズン受注金額(数値・比較用)

  バイヤー文脈(最重要):
  ・バイヤーのスタイル・方向性(テキスト):
    例「コンテンポラリー寄り。
       インポートよりも国内デザイナーズを優先している。
       ストーリー性のあるブランドに反応する傾向」
  ・意思決定の特徴(テキスト):
    例「田中バイヤー個人は反応が良くても、
       最終決定は本社MD部門。
       本社への稟議用に数字と実績が必要」
  ・発注サイクル・習慣(テキスト):
    例「毎シーズン2〜3ブランドを入れ替える方針。
       秋冬の方が新規ブランド採用に積極的。
       春夏は定番の継続が中心」
  ・刺さったトークと刺さらなかったトーク(テキスト):
    例「『売れている数字』より
       『ブランドの世界観とお店のコンセプトが合う』
       という話が刺さる。
       トレンドの話をしすぎると引く傾向」

  展示会情報:
  ・直近の展示会の来場有無(選択式)
  ・展示会での感情温度(展示会時点の記録)
  ・展示会でのナラティブメモ(テキスト):
    例「今回は1時間以上滞在。
       特にブランドAのウィメンズラインを
       繰り返し手に取っていた。
       『うちの客層に合いそう』という発言あり。
       価格帯について1回だけ確認があった(懸念点?)」
  ・今シーズンの提案予定ブランド(テキスト)
【アパレル卸向けワークフロー設計】

ワークフロー①「展示会フォローアップ(48時間以内)」:
  トリガー:「展示会での感情温度がホットまたはウォームで
            フォロー未実施×1日経過」
  → タスク:「○○様(バイヤー名) 展示会お礼・
            フォローを今日中に」
  内容:「展示会後48時間以内のフォローが最重要。
       展示会ナラティブメモを読んで、
       バイヤーが特に反応したアイテム・ブランドを確認してから連絡する。
       『先日はお越しいただきありがとうございました』より、
       『先ほどのブランドAについて、
        具体的な仕入れ条件をご案内したい』という
       具体的な一言でコンタクトする」

ワークフロー②「展示会後の進捗停滞アラート」:
  トリガー:「展示会訪問済み×フォロー中フェーズ×
            最終接触日から10日以上経過」
  → タスク:「○○様 展示会から10日以上経過——
            今週中に次のアクションを」
  内容:「熱量が下がっている可能性がある。
       価格表や詳細資料を追加で送付するか、
       アポイントを取り直す判断をする」

ワークフロー③「シーズン前の先行案内(展示会1ヶ月前)」:
  トリガー:「展示会開催日の1ヶ月前(定期設定)×
            前シーズン受注済み(ウォーム以上)」
  → タスク:「○○様 今シーズン展示会の先行ご案内」
  内容:「前シーズンに受注してくれた取引先への
       展示会前の先行案内。
       バイヤー文脈を読んで、
       今シーズンの新ブランド・新商品で
       この取引先に特に刺さりそうな内容をピックアップして案内する。
       『今シーズンの展示会、○○様に特にご覧いただきたい
        ブランドがあります』という個別感のある一言で」

ワークフロー④「未訪問取引先への展示会招待(展示会2週間前)」:
  トリガー:「展示会開催日の2週間前×
            今シーズン展示会来場未確認(クール以下含む)」
  → タスク:「○○様 今シーズン展示会のご招待——
            今週中にご案内を」
  内容:「前シーズンに取引があっても
       今シーズンまだ接触できていない取引先へのご招待。
       バイヤー文脈とICXキャプチャーを確認して、
       この取引先が関心を持ちそうなブランドを具体的に案内する」

ワークフロー⑤「見送り後の関係維持(シーズン後)」:
  トリガー:「今シーズンフェーズが『見送り』×
            感情温度ウォーム以上」
  → タスク:「○○様 今シーズン見送り——
            来シーズンへの準備を始める」
  内容:「今シーズンは見送りだったが、
       感情温度はウォームを維持している取引先は
       来シーズンの最重要ターゲット。
       見送りの理由(価格・タイミング・ブランドのフィット感等)を
       確認して、来シーズンの提案に活かす。
       見送り直後にさりげない感謝の連絡を送ることが
       来シーズンへの布石になる」

導入後の最初の発見——「展示会後48時間の法則」

EMOROCOを本格稼働させた最初の展示会(秋冬コレクション)での変化を振り返ります。

展示会当日、担当者全員にルールを一つ設けました。

バイヤーが帰った後の10分以内に、感情温度と展示会ナラティブをEMOROCOに入力する

この一つのルールが、展示会後の動き方を根本から変えました。

【展示会当日の入力ルールの効果】

Before(ルールなし):
  展示会終了後、担当者は疲弊している。
  「感触の良かった取引先」の記憶が翌日には薄れる。
  「あそこ良かったよね」という会話が記録されず消える。
  フォローアップは「なんとなく連絡すべき」感覚に頼る。

After(当日10分入力ルール):
  展示会翌朝、EMOROCOのダッシュボードを開くと:
  「ホット:8社・ウォーム:23社・クール:12社・未設定:11社」
  という分布が見える。

  「ホット8社」の展示会ナラティブを読むと:
  「ブランドAのウィメンズラインを繰り返し手に取っていた」
  「価格帯について質問があった(懸念点)」
  「来週アポを取りたいと言ってくれた」
  という具体的な情報が残っている。

  これを読んで担当者は「今日連絡すべき内容」を設計できる。
  「展示会ありがとうございました」ではなく
  「先日ご覧いただいたブランドAについて、
   価格帯の懸念に答えられる資料を用意しました。
   今週お時間いただけますか?」という
   バイヤーの感情温度に応じた具体的なフォローができる。

展示会後の最初の週、担当者4名が行ったフォロー連絡件数は前シーズン比で2.3倍でした。「なんとなく」ではなく「ナラティブを読んでから動く」設計が、行動量と質の両方を上げました。


「バイヤー文脈の共有」がチームを変えた

導入から2ヶ月後、想定外の変化が起きました。

新人の中田が「B社の田中バイヤーへの提案、どう話せばいいですか?」と聞いてきたとき、山本は「EMOROCOのICXキャプチャーを読んで」と答えました。

中田がEMOROCOを開くと、山本が記録していた情報がありました。

「田中バイヤーはブランドのストーリーに反応する。数字より世界観。稟議は本社MDが通す。本社向けには実績データが必要だが、田中さんへのプレゼンは感情で動かすのが先。競合他社より先にシーズンの方向性を共有することが信頼になる」

中田はこの情報を読んで商談に臨みました。

「中田さん、どこで田中さんのこと調べてきたの?」とB社の田中バイヤーが聞いたそうです。「前任の山本が引き継いでくれました」と中田が答えると、田中さんは「このブランド、ちゃんとうちのことを見てくれているな」と思ってくれたそうです。

その商談で、新ブランドの採用が決まりました。


1シーズン後の数字——受注率の変化

EMOROCOを本格稼働させてから1シーズン(秋冬コレクション)終了後の数字を比較しました。

【導入前後の1シーズン比較】

展示会来場後の受注率:
  Before:展示会来場取引先のうち受注に至った割合:38%
  After:展示会来場取引先のうち受注に至った割合:68%
  改善:+30ポイント(受注率1.8倍)

展示会後のフォロー連絡の平均日数:
  Before:展示会から平均8.3日後
  After:展示会から平均1.9日後
  改善:約4.4日短縮

新規取引先の開拓数(展示会未来場の取引先からの受注):
  Before:1シーズンで3社
  After:1シーズンで7社
  ← 未訪問取引先への先行招待ワークフローが寄与

見送り後のリカバリー(翌シーズンの受注):
  Before:前シーズン見送り取引先のうち翌シーズン受注:21%
  After:前シーズン見送り取引先のうち翌シーズン受注:44%
  ← 「見送り後の関係維持ワークフロー」が寄与

受注率が38%から68%に上がった最大の理由は「展示会後のフォロー速度と質の改善」でした。

展示会での熱量が最も高いタイミングで・バイヤーが反応したアイテムに特化した・具体的な内容で連絡する——この「48時間フォロー」が最も直接的な受注率改善につながりました。


「展示会の設計」そのものが変わった

もう一つの大きな変化は「展示会の事前設計」でした。

以前は展示会の準備は「会場のレイアウト・商品の配置・スタッフの役割分担」が中心でした。

EMOROCOを使い始めてから、展示会1ヶ月前に「どの取引先に・何を見せるか」という設計を事前に行えるようになりました。

【EMOROCOを使った展示会事前設計(1ヶ月前)】

STEP 1:今シーズンの招待リストをEMOROCOで作成する
  「前シーズン受注済み×感情温度ウォーム以上」:
  → 最優先招待リスト(確実に来てもらう取引先)
  
  「前シーズン見送り×感情温度ウォーム以上」:
  → 再アプローチ優先リスト(今シーズンこそ受注したい取引先)
  
  「2シーズン以上未取引×コールドではない」:
  → 関係回復チャレンジリスト(今回来てもらうことが目標)

STEP 2:各取引先のバイヤー文脈を読んで「推しアイテム」を決める
  バイヤー文脈・ICXキャプチャーを読んで、
  「この取引先にとって今シーズン最もフィットするアイテム」を
  事前に1〜3点ピックアップしてEMOROCOに記録する。

  → 展示会当日、担当者がバイヤーに声をかけるとき
    「○○様のお店には特にこちらをご覧いただきたくて」という
    一言から入れる。

STEP 3:担当者への引き継ぎをEMOROCOで行う
  展示会当日に担当を変えなければならない取引先について、
  バイヤー文脈とICXキャプチャーを事前に共有する。
  「この取引先の担当者はこういう人。こういう話し方が合う。
   この言葉は使わない方がいい」という引き継ぎが
  EMOROCOのメモから5分でできる。

この変化から学んだ「アパレル卸とCRM4.0の接続」

この1シーズンを通じて確信したことがあります。

アパレル卸の営業は「感情の温度管理」そのものである。

バイヤーが「この商品、いいかも」と思った瞬間が最高温度です。その温度が下がる前に・その温度を上げた理由を把握して・その理由に応えるフォローをする——これがアパレル卸営業の本質です。

CRM4.0の「感情温度・ナラティブ・ICXキャプチャー」という設計は、この「感情の温度管理」を仕組みとして実装するためのものでした。

「ブランドの世界観」を語るアパレルと「顧客の感情に共鳴する」CRM4.0は、同じ方向を向いていたのです。


この事例から学べる「アパレル卸×EMOROCO設計の5原則」

【アパレル卸でのEMOROCO導入成功の5原則】

原則①「展示会当日の10分入力ルールが最重要」:
  展示会の熱量が最も高い当日の10分以内に入力する習慣が、
  後の全フォローの質を決める。
  「翌日に入力しよう」では遅い。

原則②「バイヤー文脈の記録が「引き継ぎ」を変える」:
  担当者変更・新人育成・複数担当制——
  どの場合でも「バイヤー文脈」の記録があれば、
  「この取引先を知っている感覚」で接客できる。

原則③「感情温度はその場で設定する」:
  「後で設定しよう」ではなく、
  バイヤーが帰った直後に設定する。
  時間が経つほど記憶は薄れ、感情温度の精度が落ちる。

原則④「展示会後48時間以内フォローが受注率を決める」:
  展示会後のフォロー速度は受注率に最も直結する。
  ワークフローで「48時間以内タスク」を自動生成して
  フォローの遅延を構造的に防ぐ。

原則⑤「見送り取引先への関係維持が翌シーズンの受注を作る」:
  「見送り=終わり」ではない。
  見送りの理由を記録して・温度感を維持して・
  来シーズンに向けた種を今シーズン中に蒔く。

月1,500円/ユーザーから。まず今シーズンの展示会来場バイヤー全員の感情温度を設定して、「ホットなのに2週間フォローできていないバイヤー」が何社いるかを確認するところから始めてください。

その数字が、設計のスタートラインです。
EMOROCO CRM Lite 製品ページ


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関連記事:[IPO・資金調達準備×EMOROCO CRM Lite——投資家・VC・証券会社との関係管理を設計する方法]

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この記事を書いた人
松原 晋啓

詳細プロフィールはこちら
アクセンチュア等でSE、アーキテクト、コンサルタント、インフラジスティックスでエバンジェリスト(Microsoft MVP for Dynamics CRM(現 Microsoft MVP for Business Solutions))、マイクロソフトでソリューションスペシャリスト(Dynamics CRM製品担当)を経て、現在はCRMを専門に扱うサービスチームを率いて大小様々の企業のCRM導入や事業立上げを支援、その傍らでCRMエバンジェリストとしてイベントや記事寄稿を通じて"真の"CRMの理念の普及に努めている。
アクセンチュアでCRMを学び、マイクロソフトでCRM2.0(プラットフォームドCRM)を世界的に提唱したCRMの正統後継者にして現役最長のCRM専門家(CRM診断士/CRMドクター)
その後もCRM3.0(パーソナライズドCRM)、CRM4.0(クリエイティブCRM)を提唱するCRMの第一人者としてインタビューを受けたり、国内外で多くの賞を受賞している。
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