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知識創造研究室 by CRM(xRM)

アパレルブランドがEMOROCO CRM Liteで「また来てくれるお客様」を仕組みで作り、VIP客からの紹介が3倍になった話

こんにちは、CRMエバンジェリストの松原です。

「田中さん、先週また別のお店でお買い物されたみたいですよ」

インスタグラムでフォローしていた常連客の田中さんの投稿を、スタッフの佐藤が私のところに持ってきたのは、秋コレクションの入荷直後でした。

田中さんは3年来の常連です。毎シーズン必ず来てくれて、1回の購入額は平均6万円を超えていました。しかし今年に入ってから来店頻度が落ちていた。そして別のセレクトショップで買い物をした写真をInstagramに上げていた。

「田中さん、うちの新作入荷を知っていたら来てくれたかもしれないのに」と佐藤が言いました。

私はその言葉の重さをしばらく考えました。「知っていたら来てくれた」——これは逆に言えば、「私たちが先に伝えていれば防げた離脱」だったということです。

でも私たちは、田中さんの来店頻度が落ちていることに気づいていなかった。どのお客様が「久しぶり」になっているかを把握する仕組みがなかった。田中さんがどんなスタイルを好むか、どんなライフスタイルの変化があったか——それはベテランスタッフの頭の中にしかなかった。

これが、私たちがEMOROCO CRM Liteに向き合うことになったきっかけでした。


「アパレルの顧客管理の現実」——私たちが抱えていた問題

私たちのショップは、大阪・南堀江にある小規模なセレクトショップです。スタッフは私を含めて4名。顧客カルテとしてExcelと手書きのノートを使っていました。

問題を整理すると、3つに集約されました。

【アパレルショップが抱えていた「3つの構造的問題」】

問題①「誰がVIPで・誰が久しぶりかが見えない」:
  顧客台帳はExcelにあるが、
  「最後に来たのはいつか」「今シーズンまだ来ていないか」
  が即座にわからない。
  「そういえば田中さん最近来ていないな」という気づきが、
  スタッフの記憶に依存していた。

問題②「お客様の「スタイル文脈」が担当者ごとに違う」:
  ベテランの佐藤は田中さんのことを
  「カジュアルよりきれいめ・ウールは苦手・最近ライフスタイルが変わって
   ワークスタイルよりプライベート重視になっている」
  と把握していた。
  しかし私や新人の中村はこの情報を持っていなかった。
  田中さんが佐藤のいない日に来ると、
  「また一から好みを確認する」ことになっていた。

問題③「新作入荷の先行案内が「なんとなく」だった」:
  新作が入荷したとき、「誰に先に伝えるか」が
  担当スタッフの感覚で決まっていた。
  「田中さんはこういうの好きそう」という感覚的な判断で
  連絡していた。
  逆に言えば、「今シーズン久しぶりのお客様」への
  先行案内は設計されていなかった。

田中さんの件はこの3つの問題が同時に起きた結果でした。来店頻度の低下に気づけず(問題①)、スタイルの変化を全員が把握していなかった(問題②)、タイミングよい先行案内の仕組みがなかった(問題③)。


「ファッションはEMOで動く」——CRM4.0とアパレルの親和性

EMOROCOを知ったのは、アパレル業界のDX勉強会でした。

「感情温度」という概念を聞いたとき、「これだ」と思いました。

アパレルのお客様の購買は、論理ではなく感情で動きます。「この服を着た自分が好き」「このブランドは自分らしさを表現してくれる」「あの店員さんに会いに行きたい」——これらはすべて感情的な動機です。

だとすれば、顧客管理もその感情の温度感を管理すべきだ。「いつ来たか」というデータより「今どんな温度感にあるか」という定性情報の方が、次のアクションを決める上でずっと重要です。


最初の30日間——「最初にやること」を絞った

EMOROCOの設定は、私が2日かけて行いました。

アパレルに特有のフィールドを設計しました。

【アパレルショップ向けEMOROCOフィールド設計】

基本情報:
  氏名・連絡先(LINE・Instagram・メール)
  初来店日

来店管理:
  最終来店日(最重要)
  来店サイクル(週1・月1・シーズンごと・不定期)
  感情温度(ホット/ウォーム/クール/コールド)

スタイル文脈(アパレル特有):
  好みのスタイル(テキスト):
  例「きれいめカジュアル。ウールNG。
     最近トラッドからコンテンポラリーに変化中」
  好きなブランド・テイスト(テキスト)
  サイズ(テキスト):
  例「トップスS・ボトムスM。丈が長すぎると×」
  
ライフスタイル文脈(最重要):
  ライフスタイルメモ(テキスト):
  例「昨年から在宅ワーク中心に。
     通勤服より週末の外出服を重視するようになった。
     子どもが生まれて動きやすさも重視し始めている」
  記念日・節目(テキスト):
  例「誕生日:4月15日。
     毎年春のコレクションを誕生日プレゼントとして
     ご自身に購入される」
  
購買情報:
  今シーズンの購入実績(テキスト)
  平均客単価(数値)
  紹介実績件数(数値)
  
今日の一言メモ(ナラティブ):
  例「今日は新作のウールコートを試着して
     『やっぱりウールは…』とおっしゃっていた。
     素材の苦手意識が改めて確認できた。
     来週入荷のカシミヤブレンドをぜひ案内したい」

最初にやったことは「Excelに入っている顧客100名のうち、今シーズン(3ヶ月以内)に来ていないお客様を抽出すること」でした。

結果に驚きました。73名が「今シーズン未来店」でした。

全顧客の73%が今シーズンまだ来ていない。その中に「久しぶりになっているVIP客」が何人いるかが、データになった瞬間でした。


「感情温度の一斉設定」で見えてきた現実

100名全員に感情温度を設定しました。

スタッフ4名で手分けして、「このお客様との関係は今どんな状態か」を直感で設定しました。

【100名の感情温度初期設定の結果】

ホット(積極的に来てくれる・SNSでタグ付けしてくれる):12名(12%)
ウォーム(定期的に来てくれる・良好な関係):31名(31%)
クール(来店頻度が落ちている・反応が薄くなっている):38名(38%)
コールド(1シーズン以上来ていない・連絡が取れていない):19名(19%)

クール+コールドが57名(57%)。

「57人のお客様との関係が冷えている」というデータを見て、私は正直、手が止まりました。気づいていなかったのではなく「見えていなかった」のだと、このとき初めて理解しました。

田中さんは「クール」に設定されました。そして「今シーズン未来店」のフィルタリングに引っかかっていた。

「なぜ今まで気づかなかったのか」ではありません。「気づける仕組みがなかった」のです。


アパレル特有の「3つのワークフロー」を設計した

アパレルには一般的な営業CRMとは異なる、業界固有のフォローサイクルがあります。この3つをワークフローとして設計しました。

【アパレルショップ向けの3つのワークフロー】

ワークフロー①「シーズン未来店アラート」(最重要):
  トリガー:「新作入荷の翌月(季節の変わり目)×
            今シーズン来店なし×感情温度ウォーム以上」
  → タスク:「○○様 今シーズンまだいらっしゃっていません——
            新作のご案内を」
  内容:「スタイル文脈とライフスタイルメモを確認して、
       このお客様が好きそうな新作をピックアップしてから連絡する。
       『新作が入りました』ではなく
       『○○様が好きなテイストのアイテムが入りました』という
       パーソナルな一言で連絡する」

ワークフロー②「誕生日・記念日フォロー」:
  トリガー:「誕生日・記念日の2週間前」
  → タスク:「○○様 お誕生日が近い——
            今年のバースデーギフトのご提案を」
  内容:「今年のご自身へのプレゼントとして
       おすすめできるアイテムを事前に考えておく。
       メッセージには昨年の購入を覚えていることを
       さりげなく入れる」

ワークフロー③「感情温度クール→パーソナル案内」:
  トリガー:「感情温度がクールに変化したとき」
  → タスク:「○○様 来店頻度が落ちています——
            今週中にパーソナルな一言連絡を」
  内容:「売り込みなし。
       『最近いかがですか』という純粋な関心から。
       ライフスタイルメモを読んで
       その方の今の状況に寄り添う言葉を選ぶ。
       新作の案内は、会話の流れの中で自然に」

田中さんへの最初のアクション——「覚えていた」という体験

感情温度の設定が完了した翌日、私は田中さんへのアクションを取りました。

スタイル文脈とライフスタイルメモを読み直しました。「在宅ワーク中心になって・動きやすさを重視し始めている」というメモ。「ウールNG」というサイズメモ。

その週に入荷していた、コットン素材のリラックスシルエットのジャケット——これだ、と思いました。

LINE でメッセージを送りました。

「田中様、ご無沙汰しております。先日、田中様のことをぜひご案内したいと思うアイテムが入荷しました。コットン素材なのでウールが苦手な方でも快適に着られて、在宅が多い生活でもオンオフ使えるシルエットです。今週お時間があれば、ぜひ一度見に来ていただけますか」

田中さんから返信が来たのは2時間後でした。

「わかってくれてますね!ちょうどそういうのが欲しかったんです。週末に行きます」

週末、田中さんは来店してくれました。そのジャケットと合わせのパンツを購入してくれて、「こういう提案を待っていた」と言ってくれました。


3ヶ月後に起きた変化——数字で見た効果

EMOROCOの本格運用から3ヶ月後の変化を振り返ります。

【導入後3ヶ月の変化(前年同期比)】

来店客数の変化:
  ホット・ウォーム顧客の来店率:
  Before:季節来店率 約43%(感覚値)
  After:季節来店率 約68%(EMOROCOで管理した顧客)
  → 実に25ポイント改善

VIP客(平均客単価5万円以上)の来店回数:
  Before:年平均1.8回/人
  After:年平均2.4回/人(1シーズン分の期間で試算)

スタッフの「パーソナル案内連絡」の件数:
  Before:月に0〜2件(スタッフの感覚で行う)
  After:月に12〜15件(ワークフローから生成されたタスクを実施)

紹介件数の変化(最も驚いた結果):
  Before(3ヶ月):新規来店のうち紹介経由:3件
  After(3ヶ月):新規来店のうち紹介経由:9件(3倍)

紹介が増えた理由を分析すると:
  「パーソナルな一言で連絡が来た」という体験をした
  ホット・ウォーム顧客が、知人に「あのショップは覚えてくれている」
  と話してくれていた。
  「覚えていてくれる体験」が口コミを生んでいた。

「スタイル文脈の引き継ぎ」——スタッフが変わっても「知っている体験」を届ける

この3ヶ月で最も驚いた変化の一つは、スタッフ間での顧客理解の均一化でした。

以前は「田中さんのことを一番わかっているのは佐藤」という状態でした。佐藤がいない日に田中さんが来店しても、私や中村は「一から好みを聞く」しかなかった。

EMOROCOのスタイル文脈メモとライフスタイルメモを全員が読む習慣が生まれてから、これが変わりました。

中村が田中さんに対して「在宅ワーク中心になってからも着られる服をお探しですよね」と自然に言えたとき、田中さんは「そうなんです、よくわかってますね」と言ってくれました。

中村は入社して半年。田中さんに会ったのは2回目でした。

「よくわかってますね」の体験を、EMOROCOのスタイル文脈メモが生んでいた。これがCRM4.0がアパレルで実現することだと、この瞬間に確信しました。


「シーズン性の設計」——アパレル特有のフォロー時間軸

この事例で学んだアパレル業界特有の知見を整理します。

【アパレルCRMのシーズン別設計カレンダー】

春夏コレクション(2月入荷〜):
  ・前シーズン(秋冬)の未来店顧客への先行案内
  ・昨年春夏に購入されたお客様への「1年後のご様子」連絡
  ・3月・4月の誕生日顧客への特別案内

セール期間(7月・1月):
  ・感情温度クール以下の顧客への特別優先案内
    (「お得な機会に来てもらう」ことで関係を再活性化)
  ・VIP顧客へのプレセール案内(前日・当日のみ公開)

秋冬コレクション(8月入荷〜):
  ・夏の間に来ていない顧客のフォロー
  ・ライフスタイルの変化が秋に集中する顧客
    (入学・進学・就職・転職などのイベント後)

年末・クリスマスシーズン(11月〜12月):
  ・「自分へのご褒美」購買が多い時期。
    「今年のご自身へのプレゼント」という文脈で案内する
  ・誕生日が12月の顧客への早めの案内

年始(1月〜):
  ・「今年の自分」を更新したい顧客への案内
    ライフスタイルメモに「今年の目標・変化」を追記して
    新シーズンの提案に活かす

→ これらのシーズン別のアクションをすべてワークフローに設定することで、
  「何月に・誰に・何を連絡するか」が自動的にタスクとして生成される

この1年で最も大切だと気づいたこと

EMOROCO CRM Liteを本格運用して8ヶ月が経ちます。

最も大切だと気づいたことは「ファッションは関係性から生まれる」ということです。

「このお店が好き」という感情は、服の価格や品揃えだけから生まれるのではありません。「このお店のスタッフは私のことをわかってくれている」「私の変化に気づいてくれる」「来るたびに発見がある」——これらの体験の積み重ねから生まれます。

EMOROCOのスタイル文脈メモとライフスタイルメモは、「お客様のことをわかっている」体験を、スタッフ全員が・担当者が変わっても・何年後も提供し続けるための仕組みです。

「田中さんがコットンのジャケットを喜んでくれた」という体験は一つの点です。しかしその点は、スタイル文脈メモという記録がなければ生まれませんでした。

「また来たくなるお店」は感性から生まれるのではなく、設計から生まれます。EMOROCO CRM Liteは、その設計を支える仕組みです。


この事例から学べる「アパレル×EMOROCO設計の5原則」

【アパレルショップでのEMOROCO導入成功の5原則】

原則①「最初に全顧客の感情温度を設定する」:
  「クール+コールドが何%か」を把握することが
  設計のスタートライン。
  57%という数字を見るまで、問題の規模がわからなかった。

原則②「スタイル文脈メモとライフスタイルメモを必ず設定する」:
  これがアパレルCRMの「感情温度メモ」に相当する最重要フィールド。
  「好みのスタイル」だけでなく「なぜ今その服が必要か」という
  ライフスタイルの文脈が、パーソナルな提案を可能にする。

原則③「シーズン未来店アラートを最初のワークフローにする」:
  「今シーズンまだいらっしゃっていない×ウォーム以上」の顧客への
  先行案内タスクが最も直接的な来店回復につながる。

原則④「連絡は『新作が入りました』ではなく『○○様のための新作』で」:
  スタイル文脈メモを読んでからパーソナルな一言を入れる。
  「覚えていてくれた」体験が来店のきっかけになる。

原則⑤「スタッフ全員がEMOROCOを読む習慣を作る」:
  接客の前に担当顧客のレコードを「30秒読む」習慣。
  「一から好みを聞く」接客から「続きから始まる」接客へ。

月1,500円/ユーザーから。今日、まず今シーズン久しぶりになっているお客様のリストを作るところから始めてください。

「知らなかった」を「見えていなかった」に変えることが、EMOROCO CRM Liteの最初の仕事です。
EMOROCO CRM Lite 製品ページ


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この記事を書いた人
松原 晋啓

詳細プロフィールはこちら
アクセンチュア等でSE、アーキテクト、コンサルタント、インフラジスティックスでエバンジェリスト(Microsoft MVP for Dynamics CRM(現 Microsoft MVP for Business Solutions))、マイクロソフトでソリューションスペシャリスト(Dynamics CRM製品担当)を経て、現在はCRMを専門に扱うサービスチームを率いて大小様々の企業のCRM導入や事業立上げを支援、その傍らでCRMエバンジェリストとしてイベントや記事寄稿を通じて"真の"CRMの理念の普及に努めている。
アクセンチュアでCRMを学び、マイクロソフトでCRM2.0(プラットフォームドCRM)を世界的に提唱したCRMの正統後継者にして現役最長のCRM専門家(CRM診断士/CRMドクター)
その後もCRM3.0(パーソナライズドCRM)、CRM4.0(クリエイティブCRM)を提唱するCRMの第一人者としてインタビューを受けたり、国内外で多くの賞を受賞している。
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