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飲食店(個人・単店)向けにEMOROCO CRM Liteで常連客との関係とSNS口コミを設計する方法

こんにちは、CRMエバンジェリストの松原です。

「常連さんのことは頭の中に全部入っている」

多くのオーナーシェフがこう言います。でも正直に聞かせてください。本当に全部ですか。

田中さんの好きなメニュー・来店ペース・アレルギー——これは覚えている。でも「田中さんが最後に来たのはいつか」「最近来ていないことに気づいているか」「田中さんの誕生日はいつか」——これは?

そして、もしあなたが病気になったとき・スタッフに任せるとき・将来お店を誰かに引き継ぐとき——「あなたの頭の中」にある常連さんの情報はどうなりますか?

飲食店の最大の資産は「常連客との関係」です。しかしその資産が「オーナーの記憶」にしかない状態は、最も脆弱な資産管理の形です。

この記事では、EMOROCO CRM Liteを使って、個人・単店の飲食店が「常連客との関係を仕組みとして管理し、SNS口コミを設計する」方法を解説します。


飲食店の「3つの顧客の現実」——なぜ常連客管理が必要か

飲食店の売上の多くはリピーターからもたらされます。顧客管理とWeb予約の活用でリピート率40%近くまで向上した事例もあります。しかし個人・単店の飲食店では、以下の「3つの現実」が常に存在します。

現実①「常連客の記憶は経営者の頭の中に属人化している」

「山田さんはパクチーが苦手」「佐藤さんご夫婦は毎月第3金曜日に来る」「鈴木さんはカウンターより個室を好む」——これらの情報は価値ある顧客資産です。しかし紙にもデジタルにも記録されていなければ、オーナーが席を外した瞬間に「その情報は存在しない」のと同じです。

現実②「常連客の離脱は気づいたときには手遅れ」

常連だった方が来なくなったことを「そういえば最近見かけないな」と気づく頃には、もう2〜3ヶ月経っていることがよくあります。飲食店の顧客離脱は「段階的な冷却」であり、気づいた時点で介入できれば防げることも多い。しかし介入するためには「最後に来たのはいつか」を把握できていることが前提です。

現実③「SNSの口コミはコントロールできないが、設計はできる」

個人経営の飲食店がまず始めたいSNSはInstagramとLINE公式アカウントの2つです。Instagramは料理の魅力を視覚的に伝えやすく、LINE公式アカウントはリピーター育成に有効なクーポンやショップカードなどの機能が無料で利用できます。

しかし「投稿するだけ」では口コミは生まれません。「どの常連客が・どのタイミングで・どんなきっかけで投稿しやすいか」を把握して設計することで、自然な口コミの連鎖が生まれます。


飲食店向けEMOROCO CRM Liteの考え方——「顧客台帳」の進化版

飲食店のCRM設計で最も重要な原則は「入力が調理の邪魔にならないこと」です。

営業時間中に複雑な入力をする時間はありません。だからこそ「3クリック以内・30秒以内」で完結するEMOROCOの設計が飲食店に適しています。

飲食店のCRM設計における「管理すべき情報の優先度」を整理します。

【飲食店のCRM情報の優先度】

最優先(必ず記録する):
  ①最終来店日 ← 離脱を検知する最重要情報
  ②来店ペース(週1/月1/特別な日のみ/不定期)
  ③感情温度(常連度・今の関係の温かさ)

高優先(できる範囲で記録する):
  ④好きなメニュー・アレルギー・食の好み
  ⑤来店の目的・シチュエーション(仕事帰り/デート/記念日)
  ⑥一緒に来る人(一人/パートナー/ご家族/仕事仲間)

中優先(気づいたときに記録する):
  ⑦誕生日・記念日
  ⑧SNS発信力(よく投稿してくれる/たまに/しない)
  ⑨会話のきっかけになった話題・趣味・仕事

記録しなくてよいもの(飲食店では不要):
  × 企業名・役職(関係ない)
  × 詳細な商談履歴(飲食店ではなじまない)

フィールド設計——「常連台帳」をEMOROCOで作る

【飲食店向けEMOROCOフィールド設計】

■ 基本情報(最初に入力する)

・お客様のお名前(フルネームでなくてもよい:「田中さん」「山田ご夫妻」)
・連絡先(任意。LINEやInstagramのアカウント名でもよい)
・初来店日

■ 来店パターン管理(最重要)

・最終来店日(日付)← 毎来店後に更新する
・来店ペース(選択式):
  週1以上 / 月2〜3回 / 月1回 / 特別な日 / 不定期

・感情温度(選択式):
  ホット(毎回積極的に来てくれる・他のお客様に紹介してくれる)/
  ウォーム(定期的に来てくれている・良い関係が続いている)/
  クール(来店頻度が下がっている・様子が変わった)/
  コールド(長期間来ていない・音沙汰がない)

・「久しぶり」のライン(選択式):
  30日 / 60日 / 90日 / 半年
  ← 来店ペースに合わせて個別に設定する
  (月1来店の常連なら「60日来なければクール」、
   週1来店の常連なら「21日来なければクール」)

■ 食の情報(お客様を「覚えている」ために)

・よく注文するメニュー(テキスト):
  例「必ずカウンターで、まず生ビール。締めはラーメン」
・アレルギー・苦手なもの(テキスト):
  例「パクチーが苦手。卵アレルギー」
・その他の食の特徴(テキスト):
  例「辛いもの好き。コーヒーはブラック。ワインより日本酒派」

■ 人物・シチュエーション情報(会話を深めるために)

・主な来店シチュエーション(選択式・複数可):
  一人 / カップル・夫婦 / 家族 / 仕事仲間 / 友人グループ / 記念日

・職業・話題のきっかけ(テキスト):
  例「設計事務所を経営している。建築の話になると止まらない」
  例「子どもが3人いて最近中学受験の話が多い」

・誕生日・記念日(日付)

■ SNS・口コミ管理(集客に活かすために)

・SNS発信力(選択式):
  インフルエンサー(フォロワー多い・よく発信)/
  積極的(よく投稿する)/
  たまに投稿する /
  ほぼしない

・使っているSNS(選択式・複数可):
  Instagram / X(Twitter)/ TikTok / 食べログ / Google口コミ / その他

・投稿済みの口コミ・メンション(テキスト):
  例「先月Instagramに投稿してくれた。#○○(店名タグ)使用」

・紹介・連れてきてくれた実績(テキスト):
  例「田中さんの紹介で山田さんが来店。山田さんはその後常連に」

■ ナラティブメモ(覚えておきたいことを何でも)

・今日の一言メモ(テキスト):
  例「今日は一人でしんみりしていた。仕事で嫌なことがあったかも。
     次に来たとき、さりげなく様子を見る」
  例「彼女とプロポーズの相談に来ていた。
     もし次回二人で来たら、もしかしたら記念のお食事かも」

ワークフロー設計——「来店サイクルを超えた瞬間」に自動で気づく

飲食店でのワークフロー設計の核心は「離脱を早期に検知する」ことです。

【飲食店向けワークフロー設計集】

【来店途絶えアラート(最重要)】

「最終来店日から『久しぶりのライン』を超えたとき」:
  → タスク:「○○さん 最近いらっしゃっていません——近況確認を」
  内容:「LINEやInstagramのDMで
       『先日は来てくださってありがとうございました。
        最近お変わりありませんか?』という
        温かいメッセージを送ることを検討する。
        売り込みではなく、純粋な関心として」

「感情温度がクール以下に変化したとき」:
  → タスク:「○○さん 来店ペースが変わっています——気になったら連絡を」

【誕生日・記念日フォロー】

「誕生日の1週間前」:
  → タスク:「○○さん お誕生日が近い——お祝いの準備」
  内容:「誕生日にいらっしゃるかもしれない。
       バースデーサプライズの準備を検討する。
       来られない場合はLINEでメッセージを送る」

【SNS口コミの設計タイミング】

「感情温度:ホット×SNS発信力:積極的または以上」:
  → タスク:「○○さん 口コミ投稿をお願いするタイミング——今月中に」
  内容:「最もお店を気に入ってくれているタイミングに
       『よかったらInstagramで投稿していただけると
        とても嬉しいです』とさりげなく伝える。
       ハッシュタグを教えるのも効果的」

「新メニュー完成・季節メニュー更新時」:
  → タスク:「新メニューを伝える常連さんリストを確認する」
  内容:「このメニューが好きそうな常連さんを
       EMOROCOで確認してDMで先行告知する。
       『○○さんが好きそうなメニューを作りました』という
        パーソナルな伝え方が最も刺さる」

ダッシュボード設計——「今週気にかけるべき常連さん」が毎朝わかる

【飲食店向けダッシュボード設計(シンプル版)】

■ 毎朝1分の確認ビュー

「来店途絶えアラート」:
  来店ペース×1.5倍以上経過している常連さん一覧
  → 「今日、もし来てくれたら特別に迎える」準備ができる
  → 「連絡できる常連さんなら今週中にメッセージを」

「今週誕生日・記念日の常連さん」:
  → バースデーサプライズや記念日特別メニューの準備

■ 月次確認ビュー(月初に10分)

「感情温度の分布」:
  ホット:○名 / ウォーム:○名 / クール:○名 / コールド:○名
  → クール以下が増えていれば「何かが変わっているサイン」

「SNS投稿してくれた常連さんリスト」:
  → 今月投稿してくれた方へのお礼を考える

「新規→常連への転換リスト」:
  初来店から3回以上来てくれた方(ウォーム以上)
  → この時期が「常連化の最重要タイミング」
  → 名前を覚えて迎えることが最大のアクション

SNS口コミの「仕組み化」——投稿したくなる体験をどう設計するか

Instagramで新規顧客に見つけてもらうには、ハッシュタグの活用が不可欠で「地名+業態」や「メニュー名」を組み合わせると効果的です。また、お客様が投稿で使ってくれるよう「#(自店の名前)」を常に付けることで、口コミの収集につながります。

しかし「投稿してもらうための仕組み」は、ハッシュタグより先に「投稿したくなる体験の設計」が必要です。

【「投稿したくなる体験」の設計——EMOROCOで管理する3つのタイミング】

タイミング①「ピーク体験の直後」(行動経済学のピーク・エンドの法則):
  お客様が「最高だった」と感じた瞬間の直後が
  最も口コミを投稿したい気持ちになる。

  ピーク体験を生む仕掛け:
  ・誕生日サプライズ(ケーキ・メッセージ)
  ・「いつものやつ」と言わなくても注文が通った体験
  ・シェフが「○○さんの好みで少しアレンジしました」と言った瞬間
  ・見た目が「写真を撮りたい」と思わせる新メニュー

  EMOROCOとの連動:
  「今日のナラティブメモに特別なことがあったとき」
  → タスク:「○○さん 今日の体験を口コミ投稿に
           つなげるか検討(SNS発信力:積極的の場合)」

タイミング②「来店ペースが特に良い月」:
  「今月3回も来てくれている」と気づいたとき
  → 「よかったらInstagramでご紹介いただけると嬉しいです」
    という感謝とお願いが最も自然に伝わる

  EMOROCOとの連動:
  今月の来店回数が多い常連さんリストを確認する

タイミング③「新常連化したばかりの時期」(来店3〜5回目):
  初来店から数回の「お客様との関係が深まりかけている時期」が
  最も「このお店好きだな→投稿しよう」という気持ちになりやすい。

  EMOROCOとの連動:
  初来店から3回目の来店が更新されたとき
  → タスク:「○○さん 常連化のタイミング——今日名前で呼ぶ」
  内容:「名前を覚えていることを伝える最初のタイミング。
       この体験が『このお店は私を覚えている』という
       感動を生み、口コミにつながることが多い」

「覚えている体験」が口コミを生む——飲食店CRM4.0の核心

飲食店における「CRM4.0の実践」は、複雑な理論ではありません。

「前回は○○をご注文でしたよね」「最近お子さんの受験はいかがですか」「今日はいつものカウンター席にどうぞ」——これらの言葉が「この店は私を覚えてくれている」という体験を作ります。

この体験がオキシトシン(信頼ホルモン)を分泌させ、「この店のことを誰かに教えたい」という口コミ行動につながります(ポール・ザック博士のナラティブ研究)。

しかし「覚えている」ためには、記録が必要です。

【「覚えている体験」を生むEMOROCOの活用】

来店前(準備):
  ダッシュボードで今日来る可能性が高い常連さんを確認
  → そのお客様の「好きなメニュー・アレルギー・直近のメモ」を一読する
  → 「前回どんな話をしたか」を確認して会話のきっかけを準備する

来店中(実践):
  「いつものをご用意しましょうか」
  「前回おっしゃっていた○○はその後どうなりましたか」
  → これが「覚えていてくれた」という体験を生む

来店後(記録・5分以内):
  最終来店日を更新する(30秒)
  今日の一言メモを書く(1〜2分):
  「今日は彼女と記念日らしく、特別なワインを注文してくれた。
   お互い嬉しそうだった」
  感情温度を確認・更新する(30秒)

→ この5分の記録が、次の来店での「覚えている体験」を作る

「スタッフに任せるとき」の設計——オーナーの記憶をお店の記録に変える

飲食店にとってEMOROCOが最も価値を発揮するのは「オーナーが現場にいないとき」です。

スタッフが「今日の常連さん」を迎えるとき、EMOROCOのレコードを確認できれば「オーナーがいなくても、まるでオーナーが接客しているような体験」を提供できます。

【スタッフへの引き継ぎ設計】

スタッフ向けEMOROCO活用ルール(3つだけ):

ルール①:来店した常連さんの最終来店日を更新する
  → これだけで「離脱の検知」が機能する

ルール②:気づいたことがあれば一行メモを書く
  → 「いつもより元気がなかった」「新しい彼氏を連れてきた」
    など、どんな小さなことでもよい

ルール③:注文が変わったり、特別なことがあれば報告する
  → 「いつも頼むものを今日は頼まなかった」は重要なサイン

スタッフへの共有方法:
  「このお客様が来たら、まずこのレコードを見てください」
  という習慣を作ることが最初のステップ

「地域の常連客ネットワーク」を設計する——飲食店版の紹介管理

個人・単店の飲食店の新規集客の最大の源泉は「常連客からの紹介」です。

【飲食店版の紹介ネットワーク設計】

紹介実績の記録:
  「田中さんの紹介で山田さんが来た」という紹介元を記録する
  → 誰が「コネクター(紹介してくれる人)」かが見える

紹介コネクターへの特別な感謝:
  「いつも素敵なお客様をご紹介いただきありがとうございます」
  という感謝の接触が、次の紹介への動機になる

「紹介したくなるお客様」の特徴:
  感情温度:ホット × SNS発信力:積極的以上
  → このセグメントが飲食店の「最重要な集客資産」
  → 特別な体験(試作メニューの先行提供・常連限定イベントへの招待)を
    届けることで「お気に入りの店」から「自分の場所」に変わる

常連限定イベントの設計例:
  「新メニュー試食会(常連さん限定)」
  → EMOROCOの「感情温度ウォーム以上」の常連さんに
    LINEで先行案内する
  → 参加してくれた方がInstagramに投稿する可能性が高い
  → その投稿が新規客獲得につながる

まとめ——飲食店向けEMOROCO設計チェックリスト

フィールド設計:
□ 最終来店日フィールドが設定されているか
□ 感情温度(ホット/ウォーム/クール/コールド)が設定されているか
□ 「久しぶり」のライン(日数)がお客様別に設定できているか
□ 食の好み・アレルギーフィールドがあるか
□ SNS発信力フィールドが設定されているか
□ 誕生日・記念日フィールドがあるか
□ ナラティブメモ(今日の一言メモ)フィールドがあるか

ワークフロー設計:
□ 来店途絶えアラートが自動生成されるか
□ 誕生日1週間前のタスクが自動生成されるか
□ 感情温度ホット×SNS発信積極的の口コミ依頼タスクが設計されているか
□ 新メニュー告知の「好きそうな常連さんリスト」が確認できるか

ダッシュボード設計:
□ 毎朝の「来店途絶えアラート」が確認できるか
□ 今週の誕生日・記念日リストが表示されているか
□ 常連化タイミング(来店3〜5回目)が確認できるか

飲食店の常連客は「覚えられている体験」を求めてリピートします。

「あのお店は私のことを知っている」——この感覚を、オーナーが席にいるときも・スタッフが対応するときも・10年後に誰かに引き継いだときも、変わらずお客様に届けること。

それが飲食店におけるCRM4.0の実践であり、EMOROCO CRM Liteが実現することです。

月1,500円/ユーザーから。今日の営業後に、まず最も大切な常連さん10名のレコードを作るところから始めてください。
EMOROCO CRM Lite 製品ページ


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この記事を書いた人
松原 晋啓

詳細プロフィールはこちら
アクセンチュア等でSE、アーキテクト、コンサルタント、インフラジスティックスでエバンジェリスト(Microsoft MVP for Dynamics CRM(現 Microsoft MVP for Business Solutions))、マイクロソフトでソリューションスペシャリスト(Dynamics CRM製品担当)を経て、現在はCRMを専門に扱うサービスチームを率いて大小様々の企業のCRM導入や事業立上げを支援、その傍らでCRMエバンジェリストとしてイベントや記事寄稿を通じて"真の"CRMの理念の普及に努めている。
アクセンチュアでCRMを学び、マイクロソフトでCRM2.0(プラットフォームドCRM)を世界的に提唱したCRMの正統後継者にして現役最長のCRM専門家(CRM診断士/CRMドクター)
その後もCRM3.0(パーソナライズドCRM)、CRM4.0(クリエイティブCRM)を提唱するCRMの第一人者としてインタビューを受けたり、国内外で多くの賞を受賞している。
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