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知識創造研究室 by CRM(xRM)

【連載:セールスプロセスとCRM4.0】第3回 — フェーズ別実装。リード獲得からクロージング・失注分析まで、EMOROCOで設計するセールスプロセスの全体像

こんにちは、CRMエバンジェリストの松原です。

前回(第2回)では、感情温度・ICX・ナラティブメモの科学的根拠と三位一体設計を論じました。

第3回では「実装」に踏み込みます。リード獲得から失注分析まで、セールスプロセスの各フェーズにおけるEMOROCOの具体的な設計を解説します。


CRM4.0的セールスプロセスの「7フェーズ設計」

従来の「ファネル」を、CRM4.0的な「関係の時間軸」として再定義します。

【CRM4.0的セールスプロセスの7フェーズ】

Phase 1:認知・接触(Lead)
  見込み客との最初の接点
  CRM4.0的な設計:
  「なぜ今この人が関心を持っているのか」を記録する
  きっかけ・背景・状況の文脈がナラティブの起点になる

Phase 2:関係構築(Nurturing)
  まだ購買意欲は明確でない見込み客との関係を温める
  CRM4.0的な設計:
  感情温度の観察と更新が最重要
  「ウォームに変化したとき」がアポ打診のサイン

Phase 3:課題の顕在化(Discovery)
  顧客の課題・ニーズを深く理解するフェーズ
  CRM4.0的な設計:
  ICXキャプチャーが最も重要になるフェーズ
  「顧客が言語化していない本当の課題」を観察する

Phase 4:提案(Proposal)
  具体的な解決策を届けるフェーズ
  CRM4.0的な設計:
  「共鳴した言語フレーム」で提案を設計する
  感情温度と提案内容を一致させる

Phase 5:合意形成(Closing)
  意思決定が起きるフェーズ
  CRM4.0的な設計:
  「決定者の感情温度」と「影響者の感情温度」を
  別々に管理する

Phase 6:成約後の関係設計(Onboarding)
  成約は「関係の始まり」
  CRM4.0的な設計:
  カスタマーサクセスへのバトンタッチを
  「感情温度・ICX・ナラティブ」で繋ぐ

Phase 7:失注後の関係継続(Nurturing After Loss)
  失注は「関係の終わり」ではない
  CRM4.0的な設計:
  「なぜ負けたか」を記録し・関係を維持し・
  再アプローチのタイミングを設計する

Phase 1〜2:認知・接触とナーチャリングの設計

【Phase 1:認知・接触のEMOROCO設計】

フィールド設計:
・見込み客名・連絡先・会社名・業種
・流入経路(選択式):
  紹介 / SNS / 展示会 / セミナー / ウェブ問い合わせ /
  アウトバウンド / その他
・接触時の状況(テキスト):
  例「展示会で声をかけたとき、すでに競合製品を
     使っているが不満があると話していた。
     特に入力の複雑さに困っているとのこと」
・感情温度の初期設定

ワークフロー:
「流入経路:紹介 × 感情温度設定時」:
  → タスク:「○○様 紹介経由——48時間以内に紹介元への御礼を」
  内容:「紹介者への感謝連絡を紹介元レコードにも記録する」

「感情温度:ホット × フェーズ:接触直後」:
  → タスク:「○○様 今週中にアポ打診を」
  内容:「熱量が高いうちに動く。48時間が勝負」
【Phase 2:ナーチャリングのEMOROCO設計】

このフェーズの核心:
  「焦らずに関係を育てながら、温度の変化を見逃さない」

フィールド設計:
・感情温度(毎接触後に更新)
・最終接触日
・次回接触の推奨タイミング
・ICXキャプチャー(各接触後に追記)

ワークフロー:
「最終接触から30日以上経過 × 感情温度:ウォーム以上」:
  → タスク:「○○様 定期フォロー——関係温度の維持」
  内容:「売り込みなし。業界情報・有益な情報提供など
       価値ある接触を心がける」

「感情温度がウォームに変化したとき」:
  → タスク:「○○様 アポ打診のタイミング——今週中に」
  内容:「温度が上がった瞬間を逃さない。
       『少し詳しくお話できますか』という
       低ハードルの提案から始める」

「感情温度がクールに変化したとき」:
  → タスク:「○○様 温度低下——接触方法の見直しを」
  内容:「なぜ冷えたのかを考える。
       頻度を下げ・コンテンツの質を上げる。
       直接接触より情報提供に切り替える」

Phase 3〜4:課題の顕在化と提案の設計

【Phase 3:課題の顕在化(Discovery)のEMOROCO設計】

このフェーズがCRM4.0で最も重要な理由:
  「顧客が言語化していない本当の課題」を発見するフェーズ
  ICXキャプチャーが最大の価値を発揮する

フィールド設計:
・「顧客の顕在的な課題」(テキスト):
  顧客が言語化している問題
  例「フォロー漏れが月に何件かある」

・「ICXキャプチャー(潜在的な課題・本音)」(テキスト):
  顧客がまだ言語化していない深層の課題
  例「顧客が怖れているのは『フォロー漏れ』ではなく
     『担当者が変わったときに顧客が離れること』だと感じた。
     事業承継を3年後に控えているからこそ、
     この問題が今最も切実なはず」

・「意思決定者の感情温度」(別フィールド):
  表の担当者だけでなく、最終決裁者の温度感を
  別途把握・記録する
  例「部長の田中さんはホットだが、
     社長(最終決裁者)の感情温度は不明。
     来週社長との面談設定を提案する」

Discoveryフェーズの問いリスト(ナラティブに書く内容):
  ①「顧客の現在の痛み(Pain)は何か」
  ②「顧客が本当に怖れていることは何か(ICX)」
  ③「決裁者・影響者・ユーザーそれぞれの感情温度は」
  ④「競合との比較軸は何か(価格・機能・関係性)」
  ⑤「今動かない理由(ブレーキ)は何か」
【Phase 4:提案(Proposal)のEMOROCO設計】

提案書に反映すべきEMOROCOの情報:

①「共鳴した言語フレーム」フィールドから:
  顧客が反応した言葉を提案書のタイトル・冒頭に使う
  例「コスト削減」より「現場が顧客対応に集中できる環境」

②「ICXキャプチャー」から:
  顧客が言語化していない課題を「そうなんです、実は…」と
  言ってもらえる形で提案書の課題定義に使う

③「意思決定者の感情温度」から:
  決裁者がまだ温まっていない場合は、
  提案書より先に決裁者と直接話す機会を作ることを優先する

提案後のフィールド更新:
・「提案書の反応メモ」(ICXキャプチャーに追記):
  例「提案書を見た田中部長の反応:
     コスト比較のページで表情が固くなった。
     価格が問題かと思ったが、
     後の会話で競合Bへの信頼が残っていることがわかった。
     次回は競合Bとの違いを正直に・具体的に話す」

Phase 5:クロージングの設計——「押す」から「共に決める」へ

クロージングはCRM4.0において最も発想が変わるフェーズです。

従来のクロージングは「Yes/Noを引き出す技術」でした。「今月末までに決めていただければ○○できます」という期限の設定・「他社も検討しているので早めに」という希少性の演出——これらは顧客を「決断させる」テクニックです。

CRM4.0のクロージングは「顧客が自然に決断できる状態を作る」設計です。

【CRM4.0的クロージングの設計原則】

原則①「感情温度ホット × 顕在的な課題と提案の一致」:
  この状態が揃ったとき、クロージングは自然に起きる
  「押す」必要がない状態を作ることが設計の目標

原則②「決裁者の感情温度を先に確認する」:
  表の担当者がホットでも決裁者がクールなら決まらない
  「誰の感情温度を上げるべきか」を先に設計する

原則③「ブレーキを外すことを優先する」:
  「なぜ今動かないのか」という阻害要因を
  正直に確認して取り除くことが最速のクロージング

EMOROCOのクロージングフィールド:
・「クロージングの障壁」(テキスト):
  例「価格ではなく、社内稟議のタイミング(来期まで)が問題」
  例「競合Bとの関係が10年あり、切り替えへの心理的障壁が高い」
・「クロージング後の感情温度(成約直後)」:
  成約後の顧客の感情温度を記録する
  → カスタマーサクセスへの引き継ぎで使う
  → 成約直後の温度が高いほどオンボーディングが成功しやすい

Phase 7:失注分析——「負けから学ぶ」組織を作る

失注はCRM4.0において「最も価値あるデータ」です。なぜなら、失注の理由を体系的に記録・分析することで「勝ちパターンの逆」が見えるからです。

【失注分析のEMOROCO設計】

失注理由フィールド(選択式):
  価格 / 競合優勢 / タイミング(予算なし・時期尚早)/
  担当者の相性 / 機能不足 / 関係性の薄さ / その他

失注後のナラティブ(最重要):
  「なぜ今回選ばれなかったか」のICXレベルの観察
  例「価格が理由と言われたが、本当は
     競合担当者との10年の信頼関係が決め手だったと感じる。
     価格を下げても結果は変わらなかった可能性が高い。
     関係構築のフェーズをもっと時間をかけるべきだった」

失注後の関係維持設計:
  失注はゴールではない——という思想がCRM4.0の核心
  
「失注」に更新されたとき:
  → タスク①(翌営業日):
    「○○様 失注の御礼と今後の関係継続のご挨拶」
    内容:「『今回はご縁がありませんでしたが、
         引き続きお役に立てることがあれば』という
         温かい一言で関係を維持する。
         これが6ヶ月後・1年後の再アプローチの基盤になる」
  
  → タスク②(6ヶ月後):
    「○○様 失注後6ヶ月——再アプローチの検討」
    内容:「競合製品に切り替えた後、
         6ヶ月経つと不満が出やすい時期。
         純粋な近況確認から始める」

失注理由の月次分析:
  ダッシュボードで「今月の失注理由分布」を確認する
  「競合優勢が増えている → 何が変わったか」
  「タイミングが多い → ナーチャリングの設計を見直す」
  → 失注データが「次の勝ちパターン」を教えてくれる

第3回のまとめ

第3回では、セールスプロセスの全フェーズのEMOROCO設計を示しました。

Phase 1〜2(認知・ナーチャリング): 感情温度の変化を見逃さない設計。「ウォームへの変化」がアポ打診の最重要サイン。

Phase 3〜4(Discovery・提案): ICXキャプチャーが最大の価値を発揮するフェーズ。「共鳴した言語フレーム」を提案書に直接活かす設計。

Phase 5(クロージング): 「押す」から「共に決める」へ。決裁者の感情温度管理とブレーキの除去が核心。

Phase 7(失注分析): 失注は「最も価値あるデータ」。失注後の関係維持と6ヶ月後の再アプローチ設計が長期的な受注につながる。

次回予告: 最終回(第4回)「セールスチームの組織化——属人化の解消・SoI-PDCAによる組織学習・なぜEMOROCOがSalesforceより中小企業に適しているか。ROI試算と今日から始める設計」。
EMOROCO CRM Lite 製品ページ


前回:[【第2回】感情温度・ICX・ナラティブが商談を変える——脳科学と行動経済学から見たCRM4.0的セールスの核心]

次回:[【第4回(最終回)】セールスチームの組織化——属人化の解消・SoI-PDCA・なぜEMOROCOか。ROI試算と今日から始める設計]

関連記事:[OKR・KPI・KGIをEMOROCO CRM Liteに落とし込む——経営目標と現場活動をつなぐCRM設計]

関連記事:[ChatGPT×EMOROCO CRM Lite——ナラティブメモを渡すだけで「この顧客専用の提案書」が生成される設計]

この記事を書いた人
松原 晋啓

詳細プロフィールはこちら
アクセンチュア等でSE、アーキテクト、コンサルタント、インフラジスティックスでエバンジェリスト(Microsoft MVP for Dynamics CRM(現 Microsoft MVP for Business Solutions))、マイクロソフトでソリューションスペシャリスト(Dynamics CRM製品担当)を経て、現在はCRMを専門に扱うサービスチームを率いて大小様々の企業のCRM導入や事業立上げを支援、その傍らでCRMエバンジェリストとしてイベントや記事寄稿を通じて"真の"CRMの理念の普及に努めている。
アクセンチュアでCRMを学び、マイクロソフトでCRM2.0(プラットフォームドCRM)を世界的に提唱したCRMの正統後継者にして現役最長のCRM専門家(CRM診断士/CRMドクター)
その後もCRM3.0(パーソナライズドCRM)、CRM4.0(クリエイティブCRM)を提唱するCRMの第一人者としてインタビューを受けたり、国内外で多くの賞を受賞している。
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