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知識創造研究室 by CRM(xRM)

【連載:カスタマーサクセスとCRM4.0】第1回 — 「顧客の成功を売る時代」が始まった。CSの起源とNRRという指標が示すもの

こんにちは、CRMエバンジェリストの松原です。

「売ったら終わり」の時代が終わりました。

SaaSが普及し、サブスクリプションモデルが一般化した今、ビジネスの重心は「いかに売るか」から「いかに使い続けてもらうか」へと根本から移行しています。

この転換を最もよく表す言葉が「カスタマーサクセス(CS)」です。

しかし私は、カスタマーサクセスが「SaaSの用語」として使われることに、どこか物足りなさを感じてきました。カスタマーサクセスの本質は、SaaSの解約防止ではありません。それはビジネスのあり方そのものの哲学的な転換——「商品を売ること」から「顧客の成功を共に創ること」への転換——です。

そしてこの転換は、私がCRM4.0で一貫して主張してきた「管理から共創へ」という思想と、完全に一致しています。

この連載では、カスタマーサクセスとCRM4.0の思想的な接続を4回にわたって論じ、EMOROCO CRM Liteがなぜカスタマーサクセスを実践するための最も適切なプラットフォームなのかを解説します。

第1回は「CSの起源・SaaS以外への適用・NRRという指標」です。


カスタマーサクセスの起源——なぜSalesforceはこの概念を生み出したのか

カスタマーサクセスはもともとBtoB SaaS業界で生まれた言葉です。その起点はCRM大手Salesforceが、サブスクリプションモデルにおいて既存顧客の継続利用が収益を左右することから、顧客の成果創出を支援する組織を生み出したことにあります。

なぜSalesforceがこの概念を生み出さなければならなかったか——その答えは「サブスクリプションモデルの経済的な構造」にあります。

【売り切りモデルとサブスクリプションモデルの経済的な差】

売り切りモデル:
  成約時点で収益が確定する
  → 売る努力を「成約」に集中すれば良い
  → 成約後は次の顧客を探す
  → 顧客の「その後」は業績に直結しにくい

サブスクリプションモデル:
  成約は「収益の始まり」に過ぎない
  → 顧客が使い続けなければ収益にならない
  → 顧客が成功して初めて課金が続く
  → 顧客の「その後」が業績を直接決定する

  LTV(顧客生涯価値)= 月次単価 × 継続期間
  → 継続期間が長いほどLTVは上がる
  → 継続期間を決めるのは「顧客が成功しているか」

結論:
  サブスクリプションモデルでは
  「顧客の成功」が自社の収益と直結している
  → だから「顧客を成功させること」が
    ビジネス戦略の中心になる

この経済的な構造の変化が「カスタマーサクセス」という概念を必然的に生み出しました。

しかし私はここで一つの問いを立てます。

「カスタマーサクセスはSaaSだけのものか」

答えは「No」です。


カスタマーサクセスはSaaSを超えている——あらゆる「継続型ビジネス」に適用できる

カスタマーサクセスはBtoB SaaS業界で生まれた言葉だが、その必要性はBtoBやSaaSに閉じていません。あらゆる業界・業態において継続的に事業成長していくためには、LTVを高めていく必要があるからです。

「"長く"×"深く"使ってもらうことでLTVは向上する——そして"長く"×"深く"使ってもらうために、買ってもらった後を大切にする考え方こそがカスタマーサクセスなのです」

この定義を見ると、カスタマーサクセスは「業種」ではなく「顧客との関係の在り方」の話だとわかります。

【カスタマーサクセスが適用されるビジネスの条件】

①継続的な関係から収益が生まれる(解約がリスクになる):
  SaaS・サブスク・顧問契約・習い事・定期購入
  → 明らかにCSが必要

②一回の取引が次の取引につながる(LTVがある):
  保険・不動産・士業・医療・飲食(常連)
  → 実はCSの考え方が有効

③紹介・口コミが新規獲得の主要チャネルである:
  美容院・整体・ペットサロン・葬儀社・保険代理店
  → 「顧客の成功体験」が次の顧客を呼ぶ

結論:
  「解約」という概念がない業種でも、
  「顧客がこの会社との関係を続けたいと思うか」
  という問いは常に存在する。
  その問いに答えることがカスタマーサクセスの本質。

これはEMOROCO CRM Liteが対象とするあらゆる業種——士業・保険・医療・飲食・動物病院・音楽教室——に共通して適用できる概念です。


NRRという指標——「顧客の成功」を数値で表す最も正直な鏡

カスタマーサクセスを理解するとき、NRR(Net Revenue Retention Rate:売上維持率)という指標を知ることが重要です。

NRRはお客様にとって革新的でミッションクリティカルなサービスであり続けることを最も数値で表現できている指標であり、SaaSビジネスではどのフェーズでも重要視される至高のメトリクスの一つです。

【NRRの計算式と解釈】

NRR = (前期末のMRR + アップセル + クロスセル - チャーン(解約率) - 縮小)
      ÷ 前期末のMRR × 100

NRRの解釈:
  NRR 100%以上:
    既存顧客だけで売上が成長している
    → 新規獲得ゼロでも事業が拡大する「理想の状態」

  NRR 100%:
    解約した分を既存顧客の拡大でちょうど補っている

  NRR 100%以下:
    既存顧客の縮小・解約が拡大を上回っている
    → 新規獲得を止めると事業が縮小する

  優良なSaaS企業のNRR:120〜150%超
    (例:Snowflake、Datadog)

なぜNRRが重要か。

NRRは「顧客が本当に価値を感じているか」の最も正直な指標です。顧客が成功し・価値を感じているなら継続する・使用量を増やす・追加機能を購入する→NRRが上がる。顧客が成功していないなら解約する・使用量を減らす・縮小する→NRRが下がる。

そしてこの事実は、私がCRM4.0で主張してきた「顧客の深層心理に共鳴し、持続的関係性を構築すること」と完全に一致しています。

【NRR向上のための「感情温度×NRR」の相関関係】

感情温度ホット(積極的・成功実感あり)の顧客:
  → アップセル・クロスセルが発生しやすい
  → NRRを押し上げる方向に働く

感情温度ウォーム(安定・良好)の顧客:
  → 継続率が高い
  → NRRの「ベース」を支える

感情温度クール以下(冷えている)の顧客:
  → 解約・縮小リスクが高い
  → NRRを下げる方向に働く

→ EMOROCOの感情温度ダッシュボードは、
  実質的に「NRRの先行指標(Leading Indicator)」として機能する

  感情温度の分布が改善 → 数ヶ月後にNRRが改善する
  感情温度のクール以下が増加 → 数ヶ月後にNRRが悪化する

  「NRRを改善したい」と思ったとき、
  最初に見るべきは財務データではなく
  EMOROCOの感情温度ダッシュボードである

第1回のまとめ——「CS × CRM4.0」理解の出発点

第1回では3つのことを論じました。

①CSの起源: Salesforceがサブスクリプションモデルの経済的な必然として生み出した概念。「LTV = 月次単価 × 継続期間」という式が、CSが必要な理由のすべてを説明している。

②SaaSを超えた適用: 「継続的な関係から収益が生まれる」すべてのビジネスにCSの考え方は適用できる。EMOROCO CRM Liteが対象とするあらゆる業種に直接当てはまる概念。

③NRRという指標: 顧客の成功を最も正直に反映する指標。EMOROCOの感情温度ダッシュボードは「NRRの先行指標」として機能する。

次回予告: 第2回「カスタマーサクセスとCRM4.0の7つの接続点——なぜ両者は同じ思想の二つの表れなのか」を論じます。
EMOROCO CRM Lite 製品ページ


次回:[【第2回】カスタマーサクセスとCRM4.0の7つの接続点——タッチモデルとEMOROCOの設計]

関連記事:[カスタマーサクセス×EMOROCO CRM Lite——SaaSやサービス業が「解約ゼロ」を目指すCRM設計(実装設計版)]

関連記事:[CRM4.0の「6つのキーファクター」とは何か——EMOROCO CRM Liteが実現する次世代CRMの設計思想]

この記事を書いた人
松原 晋啓

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アクセンチュア等でSE、アーキテクト、コンサルタント、インフラジスティックスでエバンジェリスト(Microsoft MVP for Dynamics CRM(現 Microsoft MVP for Business Solutions))、マイクロソフトでソリューションスペシャリスト(Dynamics CRM製品担当)を経て、現在はCRMを専門に扱うサービスチームを率いて大小様々の企業のCRM導入や事業立上げを支援、その傍らでCRMエバンジェリストとしてイベントや記事寄稿を通じて"真の"CRMの理念の普及に努めている。
アクセンチュアでCRMを学び、マイクロソフトでCRM2.0(プラットフォームドCRM)を世界的に提唱したCRMの正統後継者にして現役最長のCRM専門家(CRM診断士/CRMドクター)
その後もCRM3.0(パーソナライズドCRM)、CRM4.0(クリエイティブCRM)を提唱するCRMの第一人者としてインタビューを受けたり、国内外で多くの賞を受賞している。
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