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知識創造研究室 by CRM(xRM)

EMOROCO CRM Liteのカスタムフィールドの正しい作り方 — 「入力されない」を防ぐ設計の哲学と業種別テンプレート

こんにちは、CRMエバンジェリストの松原です。

「EMOROCOを入れたのに、誰も入力してくれない」

CRM定着の失敗として最も多く聞かれるこの声。原因は担当者の「やる気の問題」ではありません。

CRMはデータベースではありません。オペレーションの道具です。営業が案件を前に進めるための仕組みであって、管理者が数字を集めるための箱ではない。この発想の転換ができるかどうかで、CRM定着の成否が決まります。

そして定着しない最大の原因は、ほぼ決まって「フィールド(入力項目)の設計ミス」にあります。

「せっかく導入するなら」と、あれもこれもと項目を追加した結果、営業が一つの案件を登録するのに10分以上かかる。移動時間にサッと入力できる設計になっていないのです。

この記事では、EMOROCO CRM Liteのカスタムフィールドを「入力される設計」にするための哲学と原則を整理し、主要業種ごとの推奨フィールドセットをテンプレートとして提示します。


なぜカスタムフィールドの設計が「定着」の鍵なのか

EMOROCO CRM Liteのノーコードカスタムフィールド機能は、自社の業務に合わせて自由に入力項目を追加・変更できる強力な機能です。しかしその自由度が、逆に「なんでも追加してしまう」という失敗を招くことがあります。

多くの企業が陥る罠は、「将来使うかもしれない」と考えて過剰なフィールドを作成してしまうこと。これは入力負担を増やし、データ品質の低下を招きます。実際、使用されないフィールドは全体の約40%に上るとされています。必須項目は5〜7個程度に絞り、残りはオプションにすることで、入力率と正確性が飛躍的に向上します。

「将来使うかもしれないから」という理由で作ったフィールドの4割は、永遠に使われないのです。


カスタムフィールド設計の「5つの原則」

原則① 「管理者が欲しいもの」より「現場が助かるもの」を優先する

最も根本的な問いはこれです。

「このフィールドは、入力した人が助かる情報か。それとも、管理者が見たい情報か」

入力項目が"管理側都合"で多すぎる——営業の現場では不要な項目が強制され、入力負荷が増大しています。「マネージャーのための作業」で終わってしまうと、現場のモチベーションは続きません。

カスタムフィールドを設計するとき、まず現場の担当者に聞いてください。「次の訪問前に、どんな情報があれば助かりますか?」——この問いへの答えが、最も入力率の高いフィールドになります。

「前回話した内容のメモ」「次回のフック(話題にすべきこと)」「担当者の好みや注意点」——これらは現場が「入力すると自分が次の訪問で助かる」情報です。一方、「昨年度の売上」「競合他社数」「市場シェア」——これらは管理者が集計したい情報で、現場が入力するメリットを感じにくいものです。

原則② 「テキスト入力」より「選択式」を使う

自由記述のテキスト入力は、「何を書けばいいかわからない」という心理的ハードルを生みます。

【入力されやすい設計】
顧客の温度感:
  ○ ホット  ○ ウォーム  ○ クール  ○ コールド

【入力されにくい設計】
顧客の温度感:[                    ](自由入力)

選択式にすることで、入力時間が30秒以下になり、データの均質性も高まります。フィールドの種類は選択式(シングル・マルチ)を基本とし、自由記述は「補足メモ」「フォロークのフック」など、本当に一行メモが必要なものだけに限定します。

原則③ 「最初は少なく」——5〜7項目から始める

導入初期は、登録すべき情報を徹底的に減らします。最初から完璧を求めないことがポイントです。定着してから段階的に項目を追加していく方が、現場にも受け入れられやすいです。

EMOROCOのノーコード機能の最大の強みは「後から変えられること」です。最初から完璧なフィールドセットを作ろうとするのではなく、「最低限これだけあれば動ける」という項目から始め、実際の使用状況を見ながら追加・削除を繰り返すことが成功の近道です。

推奨するスタートの5項目(全業種共通):

1. 顧客の温度感(選択式:ホット/ウォーム/クール/コールド)
2. 最終接触日(日付)
3. 次のアクション内容(一行テキスト)
4. 次のアクション期日(日付)
5. 担当者メモ(複数行テキスト)

これだけで「ダッシュボードのアラート機能」と「次回訪問の準備」の両方が機能します。

原則④ 「ワークフローのトリガーになるか」で判断する

フィールドに情報が入力されることで、ワークフロー自動化が動き始めます。逆に言えば、「ワークフローのトリガーにならないフィールドは優先度が低い」という判断軸が使えます。

【ワークフロートリガーになる高優先度フィールド】
・完工日 → 1ヶ月後・6ヶ月後のフォロータスクを自動生成
・次回車検満了日 → 3ヶ月前のアラートタスクを自動生成
・顧客の温度感 → 「クール」に変わったらフォロータスクを自動生成
・子どもの生年月 → 入学年齢の1年前にフォロータスクを自動生成

【ワークフローに使いにくい低優先度フィールド(後回しでよい)】
・業界シェア(参考情報で自動化には使えない)
・競合他社の詳細(テキストなのでトリガーにしにくい)

原則⑤ 「30日フリーズ」——最初の1ヶ月は追加しない

立ち上げ後、30日間のフィールドフリーズを実施してください。最初の30日間は新しいカスタムフィールドを作成しません。入ってくるすべての要求はキューに入ります。30日後、一緒にキューをレビューしてください。多くの要求は自然に解決されます(フィールドは必要なかった)、一部は既存フィールドを別の方法で使うことで満たせます。そして本当に新しいフィールドが必要なのはほんの一握りです。

「このフィールドがあれば便利では?」というアイデアは毎週出てきます。しかしそのすべてを即座に追加すると、1ヶ月後には誰も全項目を入力しない状態になります。「30日フリーズ」で要望を一度寝かせ、本当に必要なものだけを追加する文化を作りましょう。


業種別カスタムフィールド推奨セット

ここからは、EMOROCOを活用している主要業種ごとの推奨フィールドセットをテンプレートとして提示します。すべて「最初の30日間で入力すべき最小限」を想定しています。

【工務店・リフォーム会社】——OB客フォローと紹介連鎖の設計

顧客レコードへの追加フィールド:

必須(ワークフロートリガーになる):
・完工日(日付)← 5年間のフォローワークフローの起点
・工事種別(選択式:外壁塗装/屋根工事/水回り/新築/増改築)
・紹介元顧客(顧客レコードとの紐付け)
・紹介意向(選択式:高/中/低)

推奨(関係管理に使う):
・使用した塗料・素材の種類と耐用年数(テキスト)
・家族構成(テキスト:例「夫婦2名、子ども高校生1名」)
・担当者メモ(顧客の性格・好み・NG事項)

「完工日」を入力した瞬間、5年分のフォロータスクが自動生成——これがワークフローと組み合わせた最大の価値です。


【保険代理店・FP】——ライフイベントフォローの設計

顧客レコードへの追加フィールド:

必須(ワークフロートリガーになる):
・第1子の生年月(年月)← 入学タイミングからフォロータスクを自動生成
・第2子の生年月(年月)
・住宅ローン完済予定年(年)← 2年前にフォロータスクを自動生成
・想定退職年齢(数値)← 3年前にフォロータスクを自動生成
・任意保険更新月(月)← 2ヶ月前にフォロータスクを自動生成

推奨(提案精度を上げる):
・保有保険の種類(選択式・複数選択:生命/医療/学資/収入保障/火災/自動車)
・最終見直し年月(年月)
・顧客の価値観メモ(何を大切にしているか:例「節税より保障重視」)

「生年月」というたった1つのフィールドが、10年以上の提案タイミングを自動設計する——これが保険代理店での最重要フィールドです。


【製造業・ルート営業】——得意先管理と提案型営業の設計

得意先レコードへの追加フィールド:

必須(ワークフロートリガーになる):
・発注頻度パターン(選択式:毎週/月2回/月1回/四半期/不定期)
・最終発注日(日付)← 頻度の倍数経過でアラートタスクを自動生成
・予算確定時期(月)← 2ヶ月前にフォロータスクを自動生成
・関係温度(選択式:ホット/ウォーム/クール/コールド)

推奨(商談精度を上げる):
・競合の接触状況(選択式:なし/名前のみ把握/提案済み/深く入込)
・担当購買者の価値観(テキスト:例「価格より納期を重視」)
・次回提案候補品目(テキスト)

「最終発注日」×「発注頻度パターン」の組み合わせが休眠検知の核心——この2フィールドだけで離脱防止の基盤が完成します。


【学習塾】——体験後フォローと入塾転換の設計

体験申込みレコードへの追加フィールド:

必須(ワークフロートリガーになる):
・体験授業日(日付)← 翌日のフォロータスクを自動生成
・フォロー優先度(選択式:A:すぐ動く/B:1週間以内/C:長期フォロー)
・保護者の検討状況(選択式:前向き/迷っている/他塾比較中/消極的)

推奨(フォローの質を上げる):
・子どもの授業中の反応(選択式:積極的/普通/緊張/集中できず)
・保護者の主な懸念(選択式:料金/通いやすさ/指導方針/相性)
・フォローで使えるフック(テキスト:例「来月の模試結果を見てから決めたいとのこと」)

「体験授業日」入力の翌日に自動タスクが届く——「48時間以内フォロー」の原則をシステムが担保します。


【士業(社労士・行政書士)】——期限管理の設計

顧問先レコードへの追加フィールド:

必須(ワークフロートリガーになる):
・36協定有効期限(日付)← 2ヶ月前にタスクを自動生成
・算定基礎届の対象(選択式:あり/なし)
・許認可の種類と有効期限(テキスト+日付:複数設定可能)
・書類回収状況(選択式:依頼前/依頼済み/一部受領/完了)

推奨(顧問先関係の管理):
・顧問契約内容(選択式・複数選択:社保/給与計算/助成金/許認可)
・書類回収の通常リードタイム(選択式:1週間以内/2週間/1ヶ月以上)
・関係温度(選択式:良好/普通/やや冷え/要注意)

「有効期限」フィールドが士業の生命線——入力した瞬間、申請期限への逆算タスクが自動生成されます。


【BtoB営業(ITベンダー・コンサル)】——商談管理の設計

案件レコードへの追加フィールド:

必須(ダッシュボードのアラートになる):
・受注確度(選択式:A:80%以上/B:50〜79%/C:20〜49%/D:20%未満)
・決裁者アクセス状況(選択式:未接触/間接接触/直接接触/関係構築済み)
・競合の接触深度(選択式:なし/名前のみ/提案済み/深く入り込んでいる)
・失注リスク因子(複数選択式:決裁者未接触/予算未確定/競合優勢/推進者不在/2週間以上アクションなし)

推奨(商談品質を上げる):
・次のアクション期日(日付)← 期日超過でアラート
・マネージャーサポートの要否(選択式:不要/相談したい/同行希望/役員紹介希望)

「失注リスク因子」の複数選択フィールドが週次会議の議題を自動生成——チェックボックスを入れるだけで「今週介入すべき案件」がダッシュボードに浮かび上がります。


「追加する前のチェックリスト」——新しいフィールドを作る前に必ず確認する

新しいフィールドを追加したくなったとき、以下の4つを確認してください。

□ このフィールドは、入力する現場担当者にとって「次の仕事が楽になる」情報か?
  (管理者だけが見たい情報は後回し)

□ このフィールドは、ワークフローのトリガーまたはダッシュボードの条件に使えるか?
  (活用先がないフィールドは不要な可能性が高い)

□ 選択式にできないか?
  (テキスト入力が必要な理由がなければ選択式に変換する)

□ 既存のフィールドで代替できないか?
  (「担当者メモ」に書けることを別フィールドにしようとしていないか)

この4つのチェックを通過したフィールドだけが、追加する価値のあるフィールドです。


まとめ——「入力される設計」の5つの原則

原則 具体的な行動
①現場が助かる情報を優先 フィールド設計前に現場担当者に「何があると助かるか」を聞く
②選択式を基本にする テキスト入力は「補足メモ」「フック」など最小限に絞る
③最初は5〜7項目から 全業種共通の基本5項目でスタートし、定着後に追加する
④ワークフロートリガーで判断 自動化に使えないフィールドは優先度を下げる
⑤30日フリーズを守る 追加要望は30日後にまとめてレビューし、本当に必要なものだけ採用

カスタムフィールドは「多ければ多いほど良い」ものではありません。「入力する人が助かる情報」を「入力しやすい形式で」「最小限だけ」設計することが、CRM定着の最大の秘訣です。

EMOROCO CRM Liteは、ノーコードで今日からフィールドを変更できます。まずは基本5項目でスタートし、使いながら育てていく——それが「業務に合わせて育てるCRM」というEMOROCOのコンセプトの実践です。
EMOROCO CRM Lite 製品ページ


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この記事を書いた人
松原 晋啓

詳細プロフィールはこちら
アクセンチュア等でSE、アーキテクト、コンサルタント、インフラジスティックスでエバンジェリスト(Microsoft MVP for Dynamics CRM(現 Microsoft MVP for Business Solutions))、マイクロソフトでソリューションスペシャリスト(Dynamics CRM製品担当)を経て、現在はCRMを専門に扱うサービスチームを率いて大小様々の企業のCRM導入や事業立上げを支援、その傍らでCRMエバンジェリストとしてイベントや記事寄稿を通じて"真の"CRMの理念の普及に努めている。
アクセンチュアでCRMを学び、マイクロソフトでCRM2.0(プラットフォームドCRM)を世界的に提唱したCRMの正統後継者にして現役最長のCRM専門家(CRM診断士/CRMドクター)
その後もCRM3.0(パーソナライズドCRM)、CRM4.0(クリエイティブCRM)を提唱するCRMの第一人者としてインタビューを受けたり、国内外で多くの賞を受賞している。
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