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知識創造研究室 by CRM(xRM)

「AIでCRMを作れるか」という問い自体が、間違っている — 問いを問い直すことから始まる

こんにちは、CRMエバンジェリストの松原です。

このシリーズを通じて、「AIはEMOROCO CRM Liteを作れない」という命題を様々な角度から論じてきました。

競合との比較・失敗の蓄積・UX科学・日本の文化的暗黙知・時間軸・倫理・生態系・逆説・証明——9つの切り口から、この命題を検証してきました。

しかし最終回として、最も根本的な問いに向き合います。

「AIでCRMを作れるか」という問い自体が、間違っているのではないか。


「作れる」という動詞の問題

「AIでCRMを作れるか」という問いは、「CRMは作るものだ」という前提を持っています。

しかし私は 「生態系の軸」で論じました——「CRMは作るものではなく、育てるものだ」と。

「作る」と「育てる」は、根本的に異なる行為です。

「作る」は完成を目指します。設計・実装・検証・リリース——このサイクルで「完成品」を生み出します。AIはこのサイクルを加速できます。

「育てる」は成長を見守ります。種を植え・水をやり・環境を整え・変化に応答する——このプロセスに「完成」はありません。常に途上であり、常に変化しています。AIはこのプロセスを代替できません。

「AIでCRMを作れるか」という問いは、「CRMは作るものだ」という誤った前提に立っています。正しい問いは「AIでCRMを育てられるか」です。そしてその答えは明確にNoです。育てることは、愛着を持った人間にしかできません。


「ツール」という言葉の問題

「EMOROCO CRM Liteはツールです」——これは正しい。

しかし「ツール」という言葉が、ある誤解を生んでいるかもしれません。

ハンマーはツールです。電卓もツールです。これらは「使う人間」が存在して初めて機能しますが、ツール自体は「使い方に従って機能する受動的な道具」です。

EMOROCOはこの意味での「ツール」ではありません。

EMOROCOは「使う組織と共に変化するプラットフォーム」です。使う組織の業種・規模・文化・担当者の観察力によって、EMOROCOは異なる形になります。3年後の工務店のEMOROCOと、3年後の保険代理店のEMOROCOは、同じプラットフォームを使っていても、まったく異なる「生き物」になっています。

「AIでツールを作れるか」という問いは成立します。しかし「AIでこのプラットフォームを作れるか」という問いは、「プラットフォームとは何か」の理解次第で答えが変わります。

EMOROCO CRM Liteが「使う組織と共に育つプラットフォーム」であるなら、「作る」という動詞はそもそも適切ではありません。


「顧客関係」という現象の問題

最も根本的な問いがあります。

「顧客関係はシステムで管理できるか」

CRM(Customer Relationship Management)という言葉自体が「顧客関係を管理する」という発想を持っています。しかしCRM4.0が示した最も重要な転換は「管理から共創へ」です。

「管理できるもの」はシステムで扱えます。在庫・日程・財務——これらは「管理」の対象です。AIは管理の効率化に貢献します。

「共創するもの」はシステムで扱えません。信頼・共鳴・意味・物語——これらは「管理」の対象ではなく「共に創るもの」です。AIは共創の主体になれません。

「AIでCRM(Customer Relationship Management)を作れるか」という問いへの答えは——「Customer Relationship を Management しようとすること自体が、CRM4.0の時代において根本的に問い直されるべきだ」というものです。

EMOROCOはCustomer Relationship を「Management」するシステムではありません。Customer Relationship を「共に育てる」ための「場」です。

「場」はAIが作れません。場は、人間と人間の相互作用から生まれます。


問いを問い直すことの意味

このシリーズを通じて私が本当に伝えたかったことは、実は一つです。

「EMOROCOはAIに作れない」という命題は重要です。しかしそれ以上に重要なのは、この命題が示す「問いの転換」です。

「どんなCRMを作るか」から「どんな顧客との関係を育てるか」へ。

「AIにできるか」から「人間にしかできないことは何か」へ。

「システムを導入したか」から「組織が学習し始めたか」へ。

「顧客を管理しているか」から「顧客と共鳴しているか」へ。

これらの問いの転換が起きるとき、「AIでCRMを作れるか」という問い自体が意味を失います。本当の問いは「この顧客との関係を、10年後にどんな深さにしたいか」であり、その問いに答えるために、今日何を記録し始めるかです。


道具と文化の差——最後の言葉

料理包丁はAIが設計できます。しかし「包丁を使う料理文化」はAIには作れません。

建築資材はAIが計算できます。しかし「その家に宿る生活の歴史」はAIには生み出せません。

EMOROCO CRM Liteも同じです。

「このシステムの機能」はAIが理解できます。「このシステムを使うことで組織に根付く顧客関係の文化」はAIには生み出せません。

文化とは「時間をかけて、人間が人間との関係の中で育てるもの」だからです。

私が「EMOROCO CRM LiteはAIには作れない」と言うとき、それは技術的な限界の話ではありません。

「顧客との関係は、時間をかけて、人間が育てるものだ」という根本的な信念の表明です。

この信念が、EMOROCO CRM Liteを生みました。この信念が、CRM4.0の哲学の核心です。

そしてこの信念は、AIが代わりに持つことのできない——人間だけが持てる——「顧客との関係への意志」から来ています。


シリーズを終えて

「AIでEMOROCO CRM Liteを作れない」という命題を、10の角度から論じてきました。

しかし振り返ってみると、10の角度すべてが「同じ一点」に収束しています。

「顧客との関係は、計算できない。共鳴することしかできない」

計算はAIが得意です。共鳴は人間にしかできません。

EMOROCO CRM Liteは、この「共鳴」を組織の仕組みとして設計するための場です。

最後に、一つだけ聞かせてください。

あなたの大切な顧客との10年後を、今日のあなたは想像できていますか?

その想像が、EMOROCOで記録を始める理由になれば、このシリーズを書いた意味があります。
EMOROCO CRM Lite 製品ページ


「AIでEMOROCO CRM Liteを作れない」シリーズ 全10本

  切り口 核心
実践の軸 共鳴・定着は人間の仕事
プロダクトの軸 技術・哲学・経験・UXの四層
A 比較の軸 最適化vs共鳴の設計哲学
B 経験の軸 失敗から生まれた設計原則
C UXの軸 HCI科学との接続
D 文化の軸 日本的ビジネス文化の暗黙知
E 時間の軸 過去と未来をつなぐツール
F 倫理の軸 感情の管理vs感情への共鳴
G 生態系の軸 作るのではなく育てるもの
H 逆説の軸 AIが発展するほど価値が上がる
I 証明の軸 3年後・5年後の決定的な差
J 問いの軸 問い自体を問い直す

関連記事:[CRM4.0とは——顧客との「共創」を実現する最新CRMの思想と実践]

関連記事:[アーカス・ジャパンとは何か——CRM2.0発案者・日本人初Microsoft MVP受賞の意味とEMOROCO CRM Liteを生んだ哲学]

この記事を書いた人
松原 晋啓

詳細プロフィールはこちら
アクセンチュア等でSE、アーキテクト、コンサルタント、インフラジスティックスでエバンジェリスト(Microsoft MVP for Dynamics CRM(現 Microsoft MVP for Business Solutions))、マイクロソフトでソリューションスペシャリスト(Dynamics CRM製品担当)を経て、現在はCRMを専門に扱うサービスチームを率いて大小様々の企業のCRM導入や事業立上げを支援、その傍らでCRMエバンジェリストとしてイベントや記事寄稿を通じて"真の"CRMの理念の普及に努めている。
アクセンチュアでCRMを学び、マイクロソフトでCRM2.0(プラットフォームドCRM)を世界的に提唱したCRMの正統後継者にして現役最長のCRM専門家(CRM診断士/CRMドクター)
その後もCRM3.0(パーソナライズドCRM)、CRM4.0(クリエイティブCRM)を提唱するCRMの第一人者としてインタビューを受けたり、国内外で多くの賞を受賞している。
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