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「決算が終わったら終わり」では選ばれない — 税理士・会計事務所がEMOROCO CRM Liteのタスク管理とワークフローで決算フォローを仕組み化する方法

こんにちは、CRMエバンジェリストの松原です。

「A社の決算、今月のはずだけど……書類の回収、誰が連絡したっけ?」

スタッフの誰もが「自分ではない」と思っていた。結果、顧問先からの書類が届かないまま申告期限が近づく——これが、多くの税理士・会計事務所で繰り返される「見えない危機」の典型です。

関与先ごとの細かなタスクの納期管理が属人化しており、対応漏れや対応遅れが発生している。月次業務、確定申告、決算業務などの各タスクの進捗管理を最新の状況に保つことが困難——これは業界全体の構造的な課題として認識されています。

しかし同時に、今の税理士・会計事務所には別の課題も突きつけられています。

これまで通りの税務処理を提供するだけでは顧問として選ばれなくなってきた——オンライン税務顧問の台頭・クラウド会計の普及により、顧問先は税理士を選びやすくなりました。言い換えれば、乗り換えやすくもなったのです。

この二つの課題——「業務の属人化・漏れ」と「付加価値の不足」——を同時に解決するための第一歩が、EMOROCO CRM Liteによる決算フォローの仕組み化です。


税理士・会計事務所が抱える「3つの構造的問題」

問題① 顧問先情報と業務進捗が「担当者の頭の中」にある

税理士事務所に属人化が起きやすい最大の理由は「担当制」という仕組みです。担当者はむしろ、一人で最初から最後まで完了させることが責任ある仕事の仕方だと思っていることすらあります。

「A社は3月決算で、書類はいつも顧問先から直接届く」「B社の社長は忙しくて連絡が遅れることが多いから、1ヶ月前には催促が必要」「C社は相続の予備的な相談が出始めている」——こうした情報がすべて担当者の頭の中だけに存在しています。

属人化が進んだ状態で担当者が辞めてしまうと、いくら顧問先からの良い評価を得ていたとしても、その業務のノウハウという事務所の財産が失われることになります。これは業界全体で認識されている深刻な問題です。

問題② 「決算のフォロー」が守りの仕事で終わっている

多くの事務所で、決算業務は「申告書を期限内に提出すること」で完結しています。決算が終わった後に「節税の振り返り」「来期に向けた経営計画の提案」「保険・投資の見直し提案」——こうした付加価値の高い提案を行う余力が、繁忙期明けにはなくなっています。

付加価値を提供する時間をつくるためにも、業務効率化を行う必要があります——つまり、定型業務を仕組み化してこそ、付加価値提案に時間が生まれるのです。

問題③ 決算後のフォローが「次の決算まで放置」になっている

決算申告が終わったとき、顧問先との次の接点はいつですか。

「月次の資料回収のとき」「何か相談があれば」——この状態では、顧問先との関係は「書類をやりとりする業務委託関係」にとどまります。

顧問先にとっての付加価値とは、「顧問先の利益を上げるために経営計画書を作成して提案する」「経営指標をわかりやすくまとめて提出する」などです——しかしそのためには、決算後の定期的なフォロー接点を、仕組みとして設計する必要があります。


EMOROCO CRM Liteで設計する「決算フォロー仕組み化」の全体像

EMOROCO CRM Liteは、もともと顧客管理と業務フロー管理のためのノーコードCRMです。税理士業務の「決算月ベースのタスク自動生成」と「顧問先ごとの状況管理」に、そのまま応用できます。

ステップ① 顧問先レコードのカスタムフィールド設計

EMOROCO CRM Liteのノーコードカスタムフィールドで、税理士・会計事務所に必要な情報を設計します。

【顧問先レコードの必須フィールド】

基本情報:
・顧問先名・代表者名・担当窓口(先方)
・法人/個人の区分
・業種・業態
・顧問料(月額)
・契約開始年月

決算・申告に関する情報(タスク自動生成のトリガー):
・決算月(1〜12月 選択式)
・申告期限月(決算月+2ヶ月が原則、延長の場合は別途設定)
・消費税の申告義務(あり/なし/免税事業者)
・消費税の申告期限月
・確定申告が必要か(個人の場合)

業務・契約情報:
・契約サービス内容(記帳代行あり/なし/月次巡回/決算のみ など)
・書類回収方法(郵送/持参/クラウド共有/メール)
・書類回収の通常リードタイム(例:「1ヶ月かかる」)
・使用会計ソフト
・担当スタッフ(メイン/サブ)

顧問先の状況・関係管理:
・直近の経営状況(好調/普通/要注意)
・潜在的なニーズ・提案候補
  (相続対策/事業承継/補助金/財務改善/節税 など選択式)
・顧問先担当者との関係温度(良好/普通/やや冷え/要注意)
・最終接触日
・次回提案のフック(自由記述)
  例:「来期は設備投資を検討中とのこと。補助金の活用を提案できるかも」

ステップ② ワークフロー設計——「決算月」を起点に全タスクを自動生成する

EMOROCO CRM Liteの「決算月」フィールドをトリガーとして、決算から申告完了・その後のフォローまでのタスクを順次自動生成します。

【決算フォロー 完全ワークフロー】

決算月の3ヶ月前
  タスク:「決算準備ヒアリング(経営状況・節税ニーズの事前確認)」
  内容:
    ・今期の業績見込みを聞く
    ・節税対策の余地の確認(役員報酬・設備投資・保険など)
    ・決算に向けて特別な事情がないか確認(M&A・不動産売買など)
    ・書類の準備状況の確認
  ポイント:このタイミングで「先手の節税提案」ができると
           顧問先から「この事務所は先を考えてくれる」と評価される

決算月の2ヶ月前
  タスク:「書類回収の開始連絡」
  内容:
    ・決算に必要な書類リストを顧問先に送付
    ・書類回収の期限を明示(例:「〇月〇日までにご準備ください」)
    ・書類回収リードタイムが長い顧問先は早めに対応

決算月の1ヶ月前
  タスク:「書類回収状況の確認」
  内容:
    ・書類が届いていない場合はリマインドの連絡
    ・不足書類がある場合は追加依頼
    ・回収が遅れている場合は申告期限への影響を確認

決算月
  タスク:「決算作業の着手確認・進捗管理」
  内容:
    ・担当スタッフへの作業開始の確認
    ・進捗状況の週次チェック
    ・問題発生時のエスカレーション確認

決算月翌月
  タスク:「申告書の作成・チェック」
  内容:
    ・申告書の作成完了確認
    ・所長または上位担当者によるレビュー
    ・顧問先への説明資料の準備

申告期限月(決算月+2ヶ月)
  タスク:「申告書の提出・顧問先への完了報告」
  内容:
    ・申告書の提出確認
    ・顧問先への「申告完了のご報告」連絡
    ・「今期の決算の振り返り・来期に向けての提案」のアポ取り

申告完了から1ヶ月後
  タスク:「決算振り返りミーティング」(付加価値フォロー)
  内容:
    ・今期の決算の数字をわかりやすく解説
    ・来期に向けた節税・経営改善の提案
    ・顧問先の潜在ニーズに応じた追加提案
      (相続・事業承継・補助金・設備投資 など)
  ポイント:このミーティングが「税務処理の事務所」から
           「経営パートナー」への転換の接点になる

申告完了から6ヶ月後(次の決算の半年前)
  タスク:「中間フォロー・上半期の経営状況確認」
  内容:
    ・今期の進捗確認(予算対比・業績の変化)
    ・節税対策の見直しタイミングがないか確認
    ・新たな提案ニーズの発掘

消費税申告期限月(消費税申告が必要な顧問先)
  タスク:「消費税申告の書類確認・提出」
  内容:
    ・消費税申告書の作成・チェック・提出
    ・インボイス関連の確認
    ・翌期の消費税判定の確認

ステップ③ 月次業務のワークフロー——毎月繰り返す定型作業を自動化する

決算フォロー以外にも、毎月発生する定型業務もワークフロー化します。

【月次業務 自動タスク設計】

毎月の書類回収トリガー(月初に全顧問先分を自動生成):
  タスク:「○月分 書類回収・記帳処理」
  チェックリスト:
    □ 書類回収依頼の連絡済み
    □ 書類受領確認
    □ 記帳・会計入力完了
    □ 月次レポート作成
    □ 顧問先への月次報告完了

月次報告完了後:
  タスク:「月次面談・電話報告の実施」
  内容:
    ・当月の損益・資金繰りの状況を報告
    ・気になる点・次月の見通しを共有
    ・顧問先からの相談事項を受付

年末調整(10月に自動生成):
  タスク:「年末調整の準備開始」
  チェックリスト:
    □ 年末調整の依頼書送付
    □ 必要書類の案内(扶養控除等申告書など)
    □ 書類回収
    □ 年末調整計算・源泉徴収票作成
    □ 顧問先への返送

ステップ④ ダッシュボード設計——「今月の最優先タスク」を朝5分で把握する

【税理士・会計事務所 業務管理ダッシュボード】

【今月の決算・申告状況一覧】
条件:「今月が決算月」または「今月が申告期限月」の顧問先リスト
→ 今月動くべき顧問先が一目で把握できる
  決算月の顧問先数・申告期限月の顧問先数を月ごとに集計

【書類未回収アラート】
条件:「書類回収開始タスク」が完了しているのに
    「書類受領確認」チェックが未完了で、申告まで30日以内
→ 書類回収が遅れているリスクの高い顧問先を検出

【タスク期限超過アラート】
条件:期限が設定されたタスクが期限を過ぎても完了していない
→ 対応漏れ・対応遅れを検出。所長・マネージャーが即確認

【付加価値フォロー機会リスト】
条件:「申告完了から1ヶ月後の振り返りミーティング」タスクが
    完了していない顧問先
→ 「経営パートナー」としての接点を作る最重要機会の管理

【スタッフ別業務量ダッシュボード】(マネージャー向け)
→ 担当スタッフごとの今月・来月のタスク件数
  繁忙期の業務量の偏りを事前に把握して調整

【顧問先の潜在ニーズリスト】
条件:「次回提案のフック」フィールドに内容が記入されている顧問先
→ 相続・事業承継・補助金などの追加提案候補を一覧管理

ステップ⑤ 「担当者変更でも継続できる」引き継ぎ設計

EMOROCO CRM Liteで情報が一元管理されることで、担当スタッフが変わっても引き継ぎがスムーズになります。

引き継ぎ時に新担当者が確認すべき情報(EMOROCOで一覧確認):

□ 顧問先の決算月・申告期限・契約内容
□ 書類回収の方法・通常リードタイム
□ 顧問先の担当者との関係温度・注意事項
□ 現在進行中のタスクの状況
□ 過去の相談内容・提案履歴
□ 次回提案で使えるフック

この情報がEMOROCOに蓄積されていることで、新担当者は初回の訪問・電話から「以前から知っているかのような」対応ができます。顧問先が感じる「また一から説明しなければならない」という不満が構造的になくなります。


「決算フォロー」が「経営パートナー」への転換点になる

AI・クラウド会計の普及により、単純な記帳・申告代行の価値は相対的に下がっています。一方で、顧問先の経営状況を深く理解し、「次の一手」を提案できる税理士の価値は高まっています。

付加価値を提供する時間をつくるためにも、業務効率化を行う必要があります——EMOROCO CRM Liteによる仕組み化が実現することは、単なる「ミスをなくす」ことではありません。

  • 定型業務が自動化されることで、本来使うべき時間(経営提案・節税相談・関係構築)に集中できる
  • 顧問先の状況が可視化されることで、「先手の提案」が可能になる
  • 属人化が解消されることで、スタッフが安心して休め・育ち・残れる組織になる

これらすべてが、「顧問先から選ばれ続ける事務所」の基盤になります。

月1,500円からスモールスタートできるEMOROCO CRM Liteで、まず全顧問先の「決算月」を入力することから始めてください。翌日には「今月・来月に決算を迎える顧問先リスト」が一目でわかる状態になります。
https://www.emoroco.com/


まとめ——決算フォロー仕組み化チェックリスト

カスタムフィールドの設計:

  • 「決算月・申告期限月・消費税申告義務」が全顧問先に入力されているか
  • 「書類回収方法・通常リードタイム」が管理されているか
  • 「潜在ニーズ・次回提案のフック」フィールドが設定されているか
  • 「関係温度・最終接触日」が更新されているか

ワークフローの設計:

  • 決算3ヶ月前の「準備ヒアリング」タスクが自動生成されるか
  • 決算2ヶ月前・1ヶ月前の「書類回収」タスクが自動生成されるか
  • 申告完了1ヶ月後の「振り返りミーティング」タスクが自動生成されるか
  • 申告完了6ヶ月後の「中間フォロー」タスクが自動生成されるか
  • 月次業務の定型タスクが月初に自動生成されるか

ダッシュボードの設計:

  • 「今月の決算・申告期限顧問先一覧」が常時表示されているか
  • 「書類未回収アラート」「タスク期限超過アラート」が設定されているか
  • 「付加価値フォロー機会リスト」が管理されているか
  • スタッフ別業務量の偏りが事前に把握できるか

引き継ぎ設計:

  • 担当変更時に新担当者がEMOROCOを見るだけで状況を把握できるか
  • 過去の相談内容・提案履歴が記録されているか

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この記事を書いた人
松原 晋啓

詳細プロフィールはこちら
アクセンチュア等でSE、アーキテクト、コンサルタント、インフラジスティックスでエバンジェリスト(Microsoft MVP for Dynamics CRM(現 Microsoft MVP for Business Solutions))、マイクロソフトでソリューションスペシャリスト(Dynamics CRM製品担当)を経て、現在はCRMを専門に扱うサービスチームを率いて大小様々の企業のCRM導入や事業立上げを支援、その傍らでCRMエバンジェリストとしてイベントや記事寄稿を通じて"真の"CRMの理念の普及に努めている。
アクセンチュアでCRMを学び、マイクロソフトでCRM2.0(プラットフォームドCRM)を世界的に提唱したCRMの正統後継者にして現役最長のCRM専門家(CRM診断士/CRMドクター)
その後もCRM3.0(パーソナライズドCRM)、CRM4.0(クリエイティブCRM)を提唱するCRMの第一人者としてインタビューを受けたり、国内外で多くの賞を受賞している。
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