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知識創造研究室 by CRM(xRM)

マーケティング4.0とCRM4.0 — コトラーが示した「人間中心のマーケティング」とアーカス・ジャパンの思想が交差する場所

こんにちは、CRMエバンジェリストの松原です。

「企業と消費者が製品・サービスを共創することはできないか。それを通して、なりたい自分になる、自己実現ができるようになれば、それは新しいマーケティングになる」

——フィリップ・コトラー(マーケティング4.0の着想について)

「"管理"から"共創"へ。CRM4.0時代においては顧客の深層心理に共鳴することが重要であるため、心理学と同様のアプローチが必要で、いわば『企業心理学(法人心理学)』となります」

——アーカス・ジャパン(CRM4.0の定義)

この2つの言葉を並べたとき、思想の「交差」が見えます。コトラーが提唱したマーケティング4.0と、アーカス・ジャパンが提唱するCRM4.0——この2つは、異なる学術的背景と実務的文脈から生まれながら、驚くほど深い思想的な一致を持っています。


マーケティング1.0から4.0へ——「人間観の変遷」として読む

コトラーのマーケティング理論の変遷は「企業が顧客をどういう存在として捉えてきたか」の歴史です。マーケティング4.0は顧客の「自己実現欲」を満たすマーケティングを指します。自己実現欲とは、人が潜在的に持っているものを開花させて、自分がなり得るものになり切りたいと感じる欲求のことです。

この変遷をCRM発展史と並べると、思想的な「軌跡の一致」が浮かび上がります。

マーケティング1.0(製品中心)はCRM1.0(顧客情報の管理)と対応します。「顧客は市場の構成員として管理される」時代です。
マーケティング2.0(顧客中心)はCRM2.0(プラットフォーム型CRM)と対応します。「顧客は感情を持つターゲットとして分析される」時代です。
マーケティング3.0(人間中心)はCRM3.0(パーソナライズドCRM)と対応します。コトラーは製品の裏側にあるストーリーや、特定の製品や人に対する共感の追求が重要だと述べており、「顧客は価値観を持つ人間として向き合われ始める」時代です。
マーケティング4.0(自己実現)はCRM4.0(クリエイティブCRM)と対応します。「顧客は自己実現を目指す主体・共創パートナーになる」時代です。

マーケティングとCRMは、異なる学術的系譜を持ちながら、ほぼ同じ時間軸で「顧客観の進化」を辿ってきました。そしてどちらも最高到達点に「自己実現」と「共創」を置いています。


マーケティング4.0の3つの核心概念とCRM4.0との接続

核心概念①「自己実現」——顧客の「なりたい自分」を支援する

マズロー欲求五段階説において、コトラーは「生理的欲求・安全欲求・社会的欲求・承認欲求」の4段階はすでに満たされていると唱え、「自己実現欲求」こそが現代のマーケティングのフォーカス点だと提言しています。

CRM4.0が定義する「感情×意義×自己実現への対応」は、この「顧客の自己実現欲求」への直接的な応答です。

マーケティング4.0が「自己実現を支援するブランドとしての訴求」を設計するとすれば、CRM4.0は「個々の顧客が持つ固有の自己実現文脈(ICX)を深く理解し、長期的に共鳴し続けること」を担います。EMOROCOの「自己実現文脈フィールド」は、「田中社長にとっての自己実現は創業30周年に地域への恩返しを実現すること」という個別の文脈を記録する装置です。

核心概念②「共創(Co-Creation)」——4Pから4Cへの転換

コトラーはマーケティング4.0において、マーケティングミックスが「4P」から「4C」へと変わると説いています。4Cは、Co-Creation(共創)・Currency(通貨)・Communal Activation(共同活性化)・Conversation(会話)の4つの要素で構成されています。

コトラーはインタビューで「これまでの企業は一方的に製品をつくり、それを『買うの?』『買わないの?』と消費者に提示していました。しかし、レゴやハーレー・ダビッドソンのように、企業と消費者が製品・サービスを共創することはできないかと考えたのがきっかけ」と語っています。

CRM4.0のコンセプト「"管理"から"共創"へ」は、コトラーが4Cの筆頭に「Co-Creation」を置いたことと完全に対応しています。マーケティング4.0の共創が「製品・サービスの設計への顧客参加」を意味するとすれば、CRM4.0の共創は「顧客との関係性・意味・価値観そのものを共に作り続けること」を意味します。

核心概念③「5A理論」——顧客を「推奨者(Advocate)」に育てる旅

マーケティング4.0は製品の「認知・購買」を最終目標としていません。自社製品のファンになってもらい、「推奨」してもらうことをゴールとしています。コトラーが提唱した「5A」は、Aware(認知)→ Appeal(訴求)→ Ask(調査)→ Act(行動)→ Advocate(推奨)という顧客の旅であり、最終ゴールが「Advocate」です。

この5Aの役割分担を整理すると、マーケティング4.0がAware〜Askを担い、CRM4.0がAct〜Advocateを担うという相互補完の構造が見えます。マーケティング4.0が「見込み客を引き寄せる」とすれば、CRM4.0は「引き寄せられた顧客を共創パートナーへと深化させる」のです。


コトラーとアーカスジャパン——5つの思想的な一致点

一致点①「人間中心(Human-Centric)」

マーケティング4.0は「人間中心のマーケティングをバージョンアップさせ、ビジネスに取り入れる」ことを目的としています。CRM4.0の定義「存在意義や共感、持続的関係性を基軸に構築する新世代CRM」も同じ方向を向いています。「企業の論理ではなく、顧客という人間の存在と幸福を中心に据える」という思想はコトラーとアーカス・ジャパンが独立して到達した共通の結論です。

一致点②「自己実現と共創の統合」

マーケティング4.0の目的は「人がもっと自分らしくなろう」とすることを支えること。またそれと同時に、そこには利己的な思いを超えた「他者とのつながりやより良い社会」が必然的に含まれてくる。この「自己実現と他者とのつながりの両立」は、CRM4.0の「個々の顧客の自己実現文脈に共鳴しながら、共創パートナーとして社会的な価値を共に創る」という思想と一致します。

一致点③「縦から横へ」のパワーシフト

コトラーはマーケティング4.0の基本トレンドとして「縦から横へ」を論じています。企業→顧客という垂直的な一方向から、顧客と顧客・企業と顧客の水平的な対話へのシフトです。CRM4.0のパーパス・ドリブン・Web3.0対応・DAOコミュニティという「横のつながりによる共創」の思想と完全に一致しています。

一致点④「ホロスティックな人間理解」

コトラーの「デジタル人類学」として紹介されるネトグラフィー(オンライン・コミュニティの人間行動を理解する学問)・共感的リサーチ(コミュニティに深く入り込み直接面談する手法)は、CRM4.0の「ホロスティック分析——健康・生活・思想・社会関係などを含めた全体最適」と方向性が一致しています。どちらも「顧客を部分的なデータ点としてではなく、社会関係の中に生きる全体的な存在として理解する」という視点を持っています。

一致点⑤「推奨(Advocate)=持続的関係性」

コトラーの5Aが「推奨」を最終ゴールに置くことと、CRM4.0が「持続的関係性」を核心に置くことは、同じ現実を異なる言葉で表現しています。「自発的に推薦者になる顧客」は「持続的関係性の中で共創する顧客」と実質的に同一の姿です。


EMOROCO CRM Liteで「マーケティング4.0の思想」を実装する

マーケティング4.0の3つの核心概念を、EMOROCO CRM Liteのフィールド設計として実装します。

「自己実現文脈フィールド」(テキスト)には、この顧客が「なりたい自分・なりたい会社」・事業の最終的に目指している状態・なぜこの仕事をしているのかを記録します。次回の提案を「この顧客の自己実現文脈にどう貢献できるか」という視点でフレーミングするための装置です。

「共創実績フィールド」(テキスト)には、この顧客と共に取り組んできた課題・一緒に乗り越えてきた困難・共に実現してきた成功体験を記録します。担当者変更時・提案時に「私たちが共に作ってきた歴史」として振り返り、関係の深さを継承するための装置です。

「推奨意向フィールド」(選択式)には、積極的に推薦してくれている/聞けば推薦してくれそう/まだ推薦段階ではない/未確認を設定します。推奨意向が「積極的に推薦してくれている」に更新されたとき、アンバサダーとしての関与深化を検討するタスクが自動生成されます。


まとめ——マーケティング4.0とCRM4.0の役割分担

マーケティング4.0が担うこと:パーパスの発信・自己実現への訴求・5AのAware〜Askの設計・見込み客の獲得。

CRM4.0(EMOROCO CRM Lite)が担うこと:来た顧客一人ひとりの固有の自己実現文脈の理解と記録・5AのAct〜Advocateの設計・共創パートナーへの深化・推奨者ネットワークの育成。

コトラーが「見込み客が推薦者になる旅」を設計し、アーカス・ジャパンが「推薦者が共創パートナーになる関係」を設計する——この2つの思想が統合されるとき、「永続的な顧客との共創」が実現します。

概念 マーケティング4.0(コトラー) CRM4.0(アーカス・ジャパン) EMOROCOでの実装
人間観 自己実現を目指す主体 共創パートナー 自己実現文脈フィールド
顧客関係 共創(Co-Creation) 管理から共創へ 共創実績フィールド
最終ゴール 推奨(Advocate) 持続的関係性 推奨意向フィールド
顧客理解 自己実現欲求(マズロー) ICX・深層心理 ICXキャプチャーフィールド
フレームワーク 4Cへの転換 SoI(洞察のシステム) ダッシュボード×SoI-PDCA

EMOROCO CRM Lite 製品ページ


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この記事を書いた人
松原 晋啓

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アクセンチュア等でSE、アーキテクト、コンサルタント、インフラジスティックスでエバンジェリスト(Microsoft MVP for Dynamics CRM(現 Microsoft MVP for Business Solutions))、マイクロソフトでソリューションスペシャリスト(Dynamics CRM製品担当)を経て、現在はCRMを専門に扱うサービスチームを率いて大小様々の企業のCRM導入や事業立上げを支援、その傍らでCRMエバンジェリストとしてイベントや記事寄稿を通じて"真の"CRMの理念の普及に努めている。
アクセンチュアでCRMを学び、マイクロソフトでCRM2.0(プラットフォームドCRM)を世界的に提唱したCRMの正統後継者にして現役最長のCRM専門家(CRM診断士/CRMドクター)
その後もCRM3.0(パーソナライズドCRM)、CRM4.0(クリエイティブCRM)を提唱するCRMの第一人者としてインタビューを受けたり、国内外で多くの賞を受賞している。
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