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知識創造研究室 by CRM(xRM)

「10年後も選ばれている会社」は今何をしているのか — CRM4.0的経営の共通点

こんにちは、CRMエバンジェリストの松原です。

あなたの会社は、10年後も選ばれているでしょうか。

中小企業白書のデータによると、創業から10年後も存続する企業は約7割。言い換えれば、3割の企業が10年以内に市場から姿を消します。そして法務局の登記上は生きていても、実質的に活動を停止している「休廃業」を含めると、事業を継続し続けることの難しさは数字以上に厳しいのが現実です。

しかし「生存率70%」という数字の中には、大きな差があります。

10年後も「なんとか存続している会社」と、「顧客に必要とされ続け、成長し続けている会社」——この2つは根本的に違います。後者の会社は今、何をしているのでしょうか。

この記事では、「10年後も選ばれている会社」に共通する経営の本質を、CRM4.0(クリエイティブCRM)の視点から読み解きます。


なぜ「販売不振」が倒産の最大原因なのか

倒産の原因を調べると、一つの事実が浮かび上がります。

中小企業の倒産原因で最も多いのは「販売不振」です。2016年から2022年までに倒産した中小企業53,700社のうち、販売不振で倒産したのは38,107社——約71%が販売不振で倒産しているのです。

「販売不振」という言葉は、表面的には「売れなかった」という結果を指しています。しかしその本質は何か。

販売不振の原因として多いのは、「競合業と自社の差別化ができていなかったり、顧客に自社の魅力を十分に伝えられなかったりしていること」です。

つまり販売不振の根本原因は、**「顧客との関係が薄かったこと」**です。

競合との差別化が曖昧な会社は、価格競争に巻き込まれます。価格競争では、体力のある会社が残り、中小企業は消えていきます。しかし「この会社でなければならない」という顧客との深い関係を持つ会社は、価格競争に巻き込まれません。

10年後も選ばれている会社は、この「代替不可能な顧客との関係」を、今この瞬間から積み上げています。


「選ばれ続ける会社」と「消える会社」の分岐点

長期存続する企業に共通する特徴を探ると、一つの本質的な差が見えてきます。

消える会社は「顧客を獲得しようとする」。 選ばれ続ける会社は「顧客と共に育ち続ける」。

この違いは、経営の「時間軸」の違いです。

消える会社の時間軸は「今月・今期」です。今月の売上をどう作るか。今期の目標をどう達成するか。この時間軸で動く会社は、既存顧客との関係よりも新規顧客の獲得を優先します。なぜなら新規顧客の獲得は「数字を作ること」と直接つながって見えるからです。

しかし実際には、新規顧客の獲得には既存顧客の維持の5倍のコストがかかる(1:5の法則)と言われています。新規獲得に注力し続けることは、構造的にコスト効率が悪く、顧客基盤が不安定なままになります。

選ばれ続ける会社の時間軸は「5年・10年」です。この顧客との関係が10年後にどうなっているか。今日の対応が将来の信頼にどう積み上がるか。この時間軸で動く会社は、既存顧客との関係を「最も重要な資産」として扱います。

中小企業庁の2025年版中小企業白書でも明確に指摘されています。激変する環境において、従来のやり方では現状維持も困難。差別化による独自の強みの創出が重要——そして差別化の本質は「顧客との関係の深さ」にあります。


CRM4.0が解き明かす「選ばれ続ける会社」の5つの共通点

CRM4.0(クリエイティブCRM)が示す「顧客を共創パートナーとして向き合う」という思想を軸に、10年後も選ばれている会社の共通点を5つ整理します。

共通点① 「顧客の物語」を組織として記憶している

選ばれ続ける会社の担当者は、顧客と話すとき「前回の続き」から始めます。「先月、後継者のことを悩んでいるとおっしゃっていましたね。その後いかがですか?」——この一言が、「この会社は自分のことを覚えていてくれる」という深い信頼を生みます。

重要なのは、この記憶が「担当者個人の記憶」ではなく「組織の記憶」になっていることです。担当者が変わっても、「この顧客の物語の続き」から会話が始められる。これがCRM4.0の言う「ナラティブの組織的蓄積」です。

消える会社では、この記憶が担当者の退職とともに消えます。「また一から説明しなければならない」という顧客の体験が積み重なるにつれ、その会社への信頼は静かに薄れていきます。

今、この会社がやっていること: 顧客との接触のたびに「今日話した内容・顧客の状況の変化・次回使えるフック」を、個人のメモではなくCRMの顧客レコードに記録している。

共通点② 「顧客の感情の変化」を先に察知している

選ばれ続ける会社には、顧客が「そういえば、最近あの会社から連絡が来ないな」と思う前に連絡が来る、という体験があります。

「ちょうど考えていたところに連絡が来た」という体験を顧客に届け続けることが、信頼を深め、代替不可能な関係を作ります。

この「先読みの接触」は、天才的な感性ではなく仕組みから生まれています。完工日から3年後にアラートが届く。子どもが入学する1年前にフォロータスクが生成される。最終接触から30日経過した顧客が自動的にリストアップされる——これらはすべて、「感情が冷える前に先手を打つ仕組み」の実践です。

CRM4.0が「感情の変遷」と呼ぶこの概念は、選ばれ続ける会社が長年「感覚」として実践してきたことを、仕組みとして設計し直したものです。

今、この会社がやっていること: 顧客の「感情温度(ホット・ウォーム・クール・コールド)」をCRMに記録し、温度が変化した顧客への先手アクションをワークフローで自動生成している。

共通点③ 「担当者が変わっても関係が続く」仕組みを持っている

長期存続する企業に共通する最も重要な特徴の一つが、「特定の担当者への依存度が低い」ことです。

選ばれ続ける会社では、担当者が変わるたびに「また一から関係を作り直す」ことが起きません。新しい担当者が顧客に接するとき、すでにその顧客の「3年間の物語」を把握した状態で会話が始まります。

これは偶然の産物ではありません。顧客情報・感情の変遷・会話の文脈・次回のフックが、CRMに蓄積されているから実現できることです。

逆にこれができていない会社は、優秀な担当者が退職するたびに「実質的な顧客喪失」が起きます。これが長期的に積み重なると、顧客基盤が徐々に細くなり、10年後には「なぜか売上が伸びない」という状態になります。

今、この会社がやっていること: 担当者変更時に「引き継ぎのためにCRMを確認する」ことがルーティン化されている。新担当者の初回接触から「物語の続き」が始められる環境を整えている。

共通点④ 「紹介の連鎖」を意図的に設計している

選ばれ続ける会社では、新規顧客の相当数が「既存顧客からの紹介」で来ます。広告費ゼロ・信頼の担保付き・クロージングコストが低い——紹介経由の顧客は、あらゆる面で最も効率的な新規獲得です。

しかし紹介は「待つもの」ではなく「設計するもの」です。

誰が紹介してくれやすいか(紹介意向スコア)。紹介した後にどう御礼・報告するか(紹介後フォローワークフロー)。成約後にどう紹介元との関係を深めるか——これらを仕組みとして設計している会社は、紹介が「たまにラッキーで来る」ではなく「設計された頻度で来る」状態になります。

今、この会社がやっていること: CRMの顧客レコードに「紹介元・紹介意向・紹介実績」を記録し、紹介後の御礼タスクを自動生成している。「紹介意向:高×最終接触から60日以上」という条件でアラートを設定し、紹介が生まれる接点を逃していない。

共通点⑤ 「データで経営する」習慣を持っている

選ばれ続ける会社の経営者は、「なんとなく今月は調子がいい」という感覚ではなく、「今月の着地予測は○○万円で、フォローが必要な顧客は○社」という数字で経営しています。

2025年版中小企業白書が強調する「経営の自走化」——経営計画策定等を通じ、経営の振り返りと改善のサイクルを通じた「経営の自走化」——は、データに基づく意思決定の習慣なしには実現できません。

「勘と経験」の経営から「データと仕組み」の経営への転換が、10年後の競争力を決定的に左右します。

今、この会社がやっていること: 毎朝5分、ダッシュボードで「今週フォローすべき顧客・止まっている案件・フォロー率の変化」を確認する習慣が定着している。月次報告のための集計作業がなく、経営判断の時間がある。


「10年後の視点」で今日の行動を変える

ここで、一つの思考実験をしてみてください。

10年後、あなたの会社がどんな状態にあってほしいかを想像してください。

多くの経営者が思い浮かべるのは「売上が○億円」「スタッフが○名」といった数字ではなく、「○○さんのような顧客が△△社いて、毎月安定して仕事が来る状態」という景色ではないでしょうか。

その景色の中心にいるのは、数字ではなく「顧客との関係」です。

そしてその関係は、10年後に突然できるものではありません。今日の一つの接触・一つの記録・一つのフォローの積み重ねが、10年後の関係の深さを決めます。

時代とともに顧客ニーズは変化します。企業は使命を守りつつ、製品・サービス・ビジネスモデルを柔軟に更新することで顧客との関係を維持できます。この「顧客との関係を維持しながら変化する」能力が、長期存続企業の根本的な強さです。

CRM4.0の思想が示す「顧客を共創パートナーとして向き合う」という経営は、壮大な哲学ではありません。今日の接触のたびに顧客の物語を記録し、感情の変化を察知し、先手で関わり続ける——この地道な積み重ねが、10年後の「選ばれている会社」を作ります。


「10年後の視点」で今日始めること

選ばれ続ける会社は、特別な才能があるのではありません。「顧客との関係を組織として積み上げる仕組み」を持っているかどうかの差です。

その仕組みを、EMOROCO CRM Liteは月1,500円/ユーザーから構築できます。

今日から始められる3つのアクション:

① 顧客1社について「この顧客の物語」を書いてみる
  → 最初に出会ったきっかけ・これまでの変化・今の状況・次に必要なこと
  → それをEMOROCOの顧客レコードに入力する

② 「10年後も付き合っていたい顧客10社」を選ぶ
  → その10社への次のフォロー日を今日中にEMOROCOに設定する
  → ワークフローでフォロータスクを自動生成する仕組みを作る

③ 「担当者が変わっても続く関係」の設計を始める
  → 今日の接触後に「3行のメモ」をCRMに残す習慣を作る
  → これを30日続けると、「組織の記憶」の原型ができる

10年後も選ばれている会社は、今日これを始めています。始める日が早いほど、10年後の関係の深さが違います。


まとめ——「10年後も選ばれている会社」の5つの共通点

共通点 消える会社 選ばれ続ける会社
①顧客の記憶 担当者の頭の中にある 組織のCRMに蓄積されている
②感情の察知 「連絡が来なくなってから」気づく 冷える前に先手で動く
③担当変更 関係がリセットされる 「物語の続き」から始まる
④紹介の設計 「たまに来るラッキー」 仕組みとして設計されている
⑤データ経営 「感覚」で意思決定する 「数字」で意思決定する

CRM4.0が示す「選ばれ続ける会社」の経営の本質: 顧客との関係を「今日だけの取引」ではなく「10年続く物語」として設計し、その物語を組織として記録・蓄積・継承する仕組みを持つこと。
EMOROCO CRM Lite 製品ページ


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この記事を書いた人
松原 晋啓

詳細プロフィールはこちら
アクセンチュア等でSE、アーキテクト、コンサルタント、インフラジスティックスでエバンジェリスト(Microsoft MVP for Dynamics CRM(現 Microsoft MVP for Business Solutions))、マイクロソフトでソリューションスペシャリスト(Dynamics CRM製品担当)を経て、現在はCRMを専門に扱うサービスチームを率いて大小様々の企業のCRM導入や事業立上げを支援、その傍らでCRMエバンジェリストとしてイベントや記事寄稿を通じて"真の"CRMの理念の普及に努めている。
アクセンチュアでCRMを学び、マイクロソフトでCRM2.0(プラットフォームドCRM)を世界的に提唱したCRMの正統後継者にして現役最長のCRM専門家(CRM診断士/CRMドクター)
その後もCRM3.0(パーソナライズドCRM)、CRM4.0(クリエイティブCRM)を提唱するCRMの第一人者としてインタビューを受けたり、国内外で多くの賞を受賞している。
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