第5回|マーケティング4.0が示した転換点 ―「売る」から「共感される」へ、CRMの役割はどう変わったのか ―
なぜ「良い商品」だけでは選ばれなくなったのか?
前回お伝えした通り、
市場は成熟し、商品そのものでは差がつきにくくなりました。
では、顧客は何で選んでいるのでしょうか。
その答えを体系的に示したのが、
フィリップ・コトラー による
「マーケティング4.0」 です。
マーケティング4.0とは何か?
マーケティング4.0は、
デジタル時代における顧客との関係性を再定義した理論です。
その核心はこうです。
顧客は“機能”で買うのではなく、
“共感”で選ぶ。
インターネットとSNSの普及により、
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▷情報の非対称性が崩れ
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▷広告より口コミが信頼され
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▷ブランドは企業が作るものではなく、顧客と共に作るものになった
という大転換が起きました。
欲求段階の変化と消費行動
マーケティング4.0の背景には、
人間の欲求構造の変化があります。
成熟社会では、多くの消費者が
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▶生存欲求
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▶安全欲求
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▶所属欲求
といった基礎的欲求をすでに満たしています。
その上で求められているのが、
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▷自己実現
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▷意味
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▷共鳴
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▷価値観の一致
といった存在レベルの欲求です。
つまり顧客は、
「便利だから」ではなく
「自分らしいから」選ぶ
ようになっているのです。
企業は“発信者”から“対話者”へ
従来のマーケティングは、
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▶商品を作る
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▶広告する
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▶売る
という一方向の構造でした。
しかし今は、
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▷顧客が情報を発信し
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▷評価を共有し
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▷ブランド体験を拡散する
双方向の世界です。
企業は“伝える側”から
“対話する存在” へと変わらなければなりません。
ここでCRMが戦略の中心になる
共感を生むために必要なのは、
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▶顧客を深く理解すること
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▶その人に合った体験を設計すること
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▶一貫した関係性を築くこと
これらは、感覚では実現できません。
ここで必要になるのが、
CRM(顧客関係管理) です。
CRMは、
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▷顧客の属性
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▷購買履歴
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▷行動履歴
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▷問い合わせ内容
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▷SNS接点
といった情報を統合し、
顧客を立体的に理解するための基盤です。
マーケティング4.0はCRMなしでは成立しない
共感を生むには、
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▶顧客がどんな価値観を持ち
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▶どんな文脈で商品を選び
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▶どんな体験を記憶しているか
を理解する必要があります。
それは単なるデータ管理ではなく、
顧客との関係の履歴を蓄積すること
です。
つまりマーケティング4.0は、
CRMがあって初めて機能する戦略 なのです。
「売る仕組み」から「選ばれ続ける仕組み」へ
CRMの役割も変わりました。
従来:
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▷商談管理
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▷顧客リスト管理
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▷売上管理
これから:
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▶体験設計
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▶感情理解
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▶共感の可視化
つまり、
「どれだけ売れたか」
ではなく
「どれだけ共鳴できたか」
が重要な指標になります。
企業は“顧客を管理する側”ではない
マーケティング4.0が示したのは、
顧客は管理対象ではなく、
共に価値を創るパートナーである
という思想です。
この思想に基づくとき、
CRMは単なるシステムではなく、
関係性を設計する経営基盤
へと進化します。
次回予告|マーケティング5.0とAI時代のCRM
次回は、
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▷Society 5.0とは何か
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▷AIが顧客理解をどう変えるのか
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▷データが“武器”になる構造
をテーマに、
マーケティング5.0とCRMの進化
について解説します。
